九州豪雨を巡り熊本県と人吉市を提訴後に記者会見を開いた奥島直道弁護士=熊本市中央区で2024年12月16日午前10時54分、野呂賢治撮影

 熊本県内で69人の死者・行方不明者を出した2020年7月の九州豪雨で、熊本県人吉市の住民が死亡したのは適切な堤防整備や浸水被害の周知がなかったとして、住民の遺族が16日、県と人吉市に対し約3000万円の損害賠償を求め、熊本地裁に提訴した。

 訴状によると20年7月4日、人吉市内のアパートに住んでいた住民は、アパートに球磨川支流の御溝川が氾濫して水が流れ込んだため、避難しようとしたが流されて亡くなった。県は球磨川支流の適切な堤防整備をせず、市は球磨川について避難指示を防災無線で1回流しただけで、住民は支流について氾濫危険性の認識がなかった、としている。

 代理人を務める奥島直道弁護士(愛媛弁護士会所属)は「九州豪雨は検証されていないことが多々あるように思われる。裁判を通じてでしか分からないこともある」と話す。25年7月で民事上の不法行為の時効を迎えるため、それまで同様の状況で犠牲となった人の遺族を原告として募るという。

 熊本県の木村敬知事は「訴状の内容を確認した上で適切に対応する」とコメント。人吉市は「訴状が届いていないのでコメントは差し控える」としている。【野呂賢治】

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