ヘルメットをかぶってもかわいい髪形でいたい――。自転車利用者のヘルメット着用が努力義務化されて1年。しかし、ヘルメットをかぶると、蒸れて髪がぺしゃんこになったり、結んだ位置がずれたりしてしまうことがある。その問題を解決するため、中高生向けの髪形カタログが完成した。
きっかけは、女子中学生からの率直な質問だった。
2023年4月、日本自動車連盟(JAF)岡山支部の広報担当、建部拓さん(50)が、岡山市内の中学校で自転車のヘルメット着用について講習会を開いたときのことだ。女子生徒の一人から、「私の一つくくりの髪形では、おでこを隠そうとしてもヘルメットがずれてしまう。どうすればいいですか」と質問を受けた。
その場で的確な答えがすぐに思い浮かばなかった建部さん。後日、社会連携の活動で協定を結んでいたノートルダム清心女子大(岡山市)の学生に意見を聞いてみた。
「私たちにとって髪形は命。少し崩れただけでもテンションがダダ下がり」
「髪をくくる位置を耳より下にすればいいのではないか」
想像以上に髪形の崩れはヘルメット着用が進まない原因になっているようだった。そこで、秋の全国交通安全運動の期間に合わせて、ヘルメットをかぶっても崩れにくい髪形を考案し、発表することにした。
学生とJAFの職員は議論を重ねた。美容師の助言も仰ぎ、最終的にヘルメットをかぶっても崩れにくい6種類の髪形を完成させた。さらにその集大成として、カタログを制作した。
カタログはA4判13ページ。ショート、ミディアム、ロングと3種類の髪の長さごとに、セット時間5分と10分の髪形のセット方法を詳細に解説。その髪形でヘルメットをかぶった姿の写真も載せた。また巻末には、崩れにくい前髪のつくり方など、美容師からのアドバイスも紹介した。
4月初旬には完成披露会が開かれた。カタログ制作に携わった学生らが担当ページに込めた思いを語り、スタイリングを実演した。
表紙を担当した文学部3年の馬越美佳さんは「『シンプルに分かりやすく』がコンセプト。まだヘルメットをかぶっていない人にも『かぶりたい』と思ってもらえれば」と語った。ミディアムヘアを担当した人間生活学部3年の三宅心愛(ここあ)さんは「すてきな髪形ができあがったので、ぜひ多くの人に見てほしい」と声を弾ませた。
岡山県警によると、昨年7月の県内の自転車利用者のヘルメット着用率は7・4%で、全国平均の13・5%を大きく下回っていた。県警交通企画課は「着用率が伸びておらず、まだまだ呼び掛けが必要な段階だ」と強調する。
カタログに掲載したヘアセットの手順の動画は、ノートルダム清心女子大のユーチューブチャンネルで公開している。建部さんは「中高生だけでなく大人にも応用できるので、ぜひ参考にしてほしい」と呼び掛けている。【平本泰章】
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