2025年1月で阪神大震災発生から30年となるのを前に、神戸大学が犠牲になった学生らの思い出を振り返る展示会を神戸市のキャンパスで開いている。震災を知らない世代が増えるなか、被害の実態や教訓を伝える。神戸大が犠牲者に焦点を当てた展示会を開くのは初めて。
神戸大の震災犠牲者は、統合された神戸商船大学を含め学生44人、職員2人、研究員1人の計47人に上った。展示内容は47人全員の顔写真、遺族の思い、遺品などで構成する。
遺族の思いは震災後に学生が聞き取った。生前、公認会計士を目指した息子からの「お父さん、受かったよ」との報告や、自宅で同居する娘が本棚の下敷きになり父が心臓マッサージを繰り返したエピソードなどを紹介している。
神戸大の文書史料室の野邑理栄子室長補佐は「学生の遺族も70〜80代になった。被害を伝えるには、30年の節目が最後かもしれないと思った」と語る。遺族からは感謝を伝える手紙も届いているという。
展示を見た同大1年、越智大和さん(19)は「突然命が奪われる怖さを感じ、人ごとではないと思った」。神戸市で生まれ育ったが学生らの被害を知らなかったという。「地元の出来事にもっと目を向けなければ」と気持ちを新たにした。
神戸市の自営業、和田健太郎さん(51)は震災当時、市内にある大学の4年生。「自分も被害に遭っていたかもしれない」と目に涙を浮かべ、卒業論文執筆や就職準備に励むなか犠牲になった学生に自身を重ねた。
神戸大の学生団体によるパネル展も同時開催中。避難所となり人々が身を寄せ合う同大の武道場、ホームが崩れ落ちたJR六甲道の駅舎など、被災直後の様子を切り取った写真が並ぶ。企画した同大3年、奥田百合子さん(21)は「学生に身近な場所の被害を紹介し、関心を持ってもらう狙いがある」と話す。
展示は神戸大学百年記念館1階展示ホールで25年1月末まで。入場無料。
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