街頭でガザの停戦を訴えるパレスチナを想う熊本市民の会の白木世志一さん(中央)ら=熊本市中央区で2024年4月7日午後2時55分、中村敦茂撮影

 パレスチナ自治区ガザ地区でのイスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘は開始から7カ月近くが過ぎた。3万4000人を超す人々が亡くなり、深まるばかりの人道危機に、遠く離れた日本の、そのまた地方から停戦や救援を訴える人たちがいる。熊本市でそんな活動に取り組む人たちに話を聞き、地方で声を上げることの意味を考えた。

 「FREE FREE PALESTINE!(パレスチナに自由を)」。

 戦闘から半年となった4月7日、熊本市中央区の繁華街にシュプレヒコールが響いた。「パレスチナを想う熊本市民の会」メンバーらによるデモ行進。約40人が参加し、パレスチナ旗や「STOP NOW」などと書かれたプラカードを手に練り歩いた。

 会の発足は、ハマスによる2023年10月7日の越境攻撃から2週間後の同21日。市内の40代女性ら4人が発起人となり、デモ行進を呼び掛けたことが始まりだった。女性は「これからひどくなっていく予感があった」と振り返る。その心配の通り、惨状は拡大。会ではデモ行進や街頭でのアピール行動を重ね、インスタグラムでパレスチナに関する情報を発信するなど活動を続けてきた。

 地方で声を上げる意味をどう考えるのか。女性は「確かに距離は遠いが、中心にいなくても、熊本でも、どこにいても、今世界で何が起きているかを知って行動することはできる。一人一人がカギ。動くことで変えていけることがあると示したい」と力を込める。

 23年12月にメンバーに加わった熊本市中央区のフリーカメラマン、白木世志一(よしかず)さん(53)は今では中心メンバーの一人だ。「ただ見ている人だけの人になりたくない。だからここに立っている」。4月7日のデモ行進後の街頭アピールでマイクを握り、訴えた。「ガザでは家族全員を殺され、自分の名前すら分からない子供たちがいる。祈るだけでなく、今こそすべての人間のための行動を」

 白木さんにも活動の意義を問うと、こう答えた。「かわいそうと思うだけではどうにもならない。街頭に立ったり署名をしたり、他の人と話をしたり、できることはたくさんある。行動することで、まだ動けていない人を後押ししたり、政治を動かしたりできる」

 確かに市民らの声が集まった世論は政治を動かす力だ。当のイスラエルでも強硬派のネタニヤフ首相の退陣を求めるデモが、政権に圧力をかけている。米国でもイスラエルを擁護する政権への反発が広がる中で、バイデン大統領はイスラエル寄りの姿勢を変化させた。

 中東のガザから遠く離れた日本。紛争の当事国ではなく、米国のような影響力もない。そんな国の地方から上がる一人一人の声の力は、確かに小さいかもしれないが、何も行動しないままでいる「ゼロ」とは決定的に違う。積み重なればその分大きくなり、政府や国際社会を動かす可能性を持っている。だから「一人一人がカギ」なのだ。2人の話を聞き、そう考えた。【中村敦茂】

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