滋賀県警の職員に向けて講演する心誠さんの両親=大津市打出浜1で、2024年4月24日午後1時31分、菊池真由撮影

 大津市で2019年5月5日に起きた飲酒運転事故で当時小学4年生だった心誠(しんせい)さんが亡くなって5日で5年を迎えた。心誠さんの両親が先月、被害者支援に携わる警察官に向けた研修の一環として「私たちが思うこと、できること」と題して県警本部で講演した。父親は「突然大切な息子の心誠の人生が終わってしまった。すごく苦しい感情。記憶は今も心や脳裏に焼き付いて離れません」と訴えた。【菊池真由】

 事故が起きた日、心誠さんの家族らは自宅のある富山県から京都府の心誠さんの兄宅へ車で向かっていた。午前0時50分ごろ、大津市の国道161号で、飲酒運転で逆走してきた車と衝突。シートベルトをして後部座席で眠っていた心誠さんは頭を強く打って亡くなった。

ゴールデンウイーク中の飲酒運転事故で亡くなった当時9歳だった心誠さん=遺族提供

 母親は「二度と心誠に会えなくなるなんて全くもって信じられない。そんな中でも冷静にいよう、しっかりせねば、そんな気持ちもあった」と振り返りながら、事故直後に対応した警察官への思いを語った。心誠さんが搬送された病院で心誠さんの名前や生年月日を聞かれた。「心誠」という名前を書こうとしたものの「もう名前を書くことが無くなる」と思うと、手を進めることができなくなった。そばにいた警察官が「何か困ったことがあれば言ってほしい、連絡してほしい」と声を掛けてきたという。「今でもありがたいと思っている」と感謝の気持ちを口にした。

 また、両親は地域によって被害者支援が異なることなどについて「今一度配慮していただきたい」と強調した。講演を聞いた警察官の中には、涙を流す人もいるなど両親の言葉を一つ一つかみ締めながら聞いている様子だった。

 講演会終了後の取材で父親は「非常に熱心に聞いていただけた」とうなずいた上で、「それぞれの役割で職務を遂行して、被害者遺族の支援をしていってほしい」と願った。母親は「警察官の顔を見ていると私の言いたいことがきっと届いているはずだと思って話すことができた」と振り返り、「被害者支援に関わる担当の方が異動する場合もあるので誰が支援にあたっても引き続き支援を継続してほしい」と望んだ。

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