松本市立旭町中学校桐分校の入学式で誓いの言葉を述べる新入生=長野県松本市で2024年4月9日、高橋秀明撮影

 全国で唯一、刑務所内にある長野県松本市の公立中学校で9日、入学式があった。今年度は1955年の開校以来、初めて女子受刑者が入学した。「自分を変えたい」――。彼女たちはそんな思いで、扉を開けた。【高橋秀明】

 入学式が開かれたのは、同市の松本少年刑務所内にある市立旭町中学校桐分校。今年度の入学は女子に限られ、全国の女子刑務所から移った20~60代の5人を迎えた。

 緊張した面持ちで入学式に臨んだ新入生代表の60代女性は「学力不足から社会でつらい思いをしてきた。学び直したいという強い気持ちはみんな一緒。人としても成長したい」と誓いの言葉を述べた。式を終えた5人は教室に向かい、理科の授業を早速受けた。窓ガラスの外の鉄格子や監視カメラ以外、よくある教室の風景と何ら変わりない。

 入学生は全国各地の刑務所の希望者から選ばれる。松本少年刑務所が男性受刑者だけを収容していることもあり、これまで募集対象は男性だけだった。2025年6月から施行される改正刑法では、受刑者の更生がより重視され、教科指導なども柔軟に行えるようになる。そのため、今年度の入学者選抜から対象を女子に拡大し、応募があった16人の中から学力試験や面接などで5人が選ばれた。

 新入生の一人は「勉強しておけばよかったと思うことがあった。知ったふりをしながら今まで生活してきた。でもここで、そんな自分を変えたい」と志望動機を説明した。「高卒認定試験を目指したい」「中学生の時に目指していた夢に近づきたい」――。そんな声もあった。

 桐分校生は中学3年に編入。1年間で主要5教科や音楽、美術などを1日7時限ずつ学ぶ。運動会や合唱発表会などの学校行事や、旭町中本校の生徒と交流する機会もある。入学した5人は、男性受刑者との接触を避けて生活し、女性用トイレも用意される。

 女子受刑者の社会復帰に尽力してきた更生保護法人「両全会」(東京都)の小畑輝海理事長は「女子受刑者は窃盗や薬物の犯罪が多く、ともに依存性が強い。依存から抜け出して社会復帰していくためには、特に情操教育が重要になる。桐分校の門戸が女子に開かれたことは、再犯防止のためにも素晴らしいことだ」と指摘した。

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