集合して記念撮影する交流会の参加者=東京都渋谷区広尾5で2024年4月18日午後3時5分、斎藤良太撮影

 「年齢を重ねたからこそ、カッコいい生き方をしたい」。4月中旬、SNS(ネット交流サービス)で知り合った女性たちの交流会が東京都内で開かれた。参加者は、60代を中心に2日間で約60人。少子高齢化社会で「老後」に不安を感じる人が少なくないなか、自分らしく生きようとする女性たちの姿を追った。【斎藤良太】

 渋谷区広尾の飲食店に4月17、18日、思い思いの服装の女性たちが集まった。40~80代で首都圏在住者が多いが、大阪や宮城、米国からの参加者も。自身のファッションの写真や動画を「インスタグラム」や「ユーチューブ」に投稿し、感想を伝え合い、つながりが広がったという。

益子秀美さん(左端)の歌に合わせて躍りながら合唱する参加者=東京都渋谷区広尾5で2024年4月18日午後2時52分、斎藤良太撮影

 参加者は、その日のファッションを紹介して歓談。「時代」や「翼をください」など往年のヒット曲を合唱して踊った。約7割が初参加だったが、互いのファッションを撮影して打ち解けた。全員での記念撮影では「寝たきりより出たきり」を合言葉に、満面の笑みを浮かべた。

 最高齢の河奥明美さん(85)=世田谷区=は、約3年半前に亡くなった夫を10年ほど自宅で介護した。自由に外出できない状況でも、服飾デザイナーの経験を生かし、パッチワークで改良した服などをネット上で紹介していた。夫の死後は、インスタグラムで知り合った友人と会う機会が増えた。「インスタがなかったら、家に引きこもっていたかも。今は最高に幸せ」と顔をほころばせた。

参加者で最高齢の河奥明美さんを紹介する、山本美千子さん(左)と島崎真代さん(右)=東京都渋谷区広尾5で2024年4月18日午後0時40分、斎藤良太撮影

 交流会を主催したのは、板橋区のファッションコーディネーター、島崎真代さん(70)▽福岡県新宮町のフォトグラファー、山本美千子さん(68)▽茨城県取手市のライフスタイルプランナー、益子秀美さん(64)。住む場所も年齢も職業も異なり、リアルな世界では接点がなかった3人は数年前に知り合った。自身の活動をそれぞれのSNSで紹介し、メッセージを交換する中で意気投合した。

 3人は、一緒に着飾った写真や動画をSNSに公開。その姿に感化されたフォロワーたちから「実際に会ってみたい」という声が相次ぎ、2013年3月、中央区で「交流会」を開催すると約20人が集まった。今回は4回目の開催になった。

 島崎さんは参加者のファッション、山本さんは「インスタ映え」する写真、益子さんは合唱についてそれぞれ助言する。3人が得意分野を生かし、交流会を盛り上げている。3人ともいったん専業主婦になったが、子育てが落ち着いた40~50代で家の外に仕事を求めた。「私たちが輝きを取り戻した経験を、家庭に縛り付けられている女性に知ってもらい、励ましたい。この思いが原動力になっている」と言う。

 55歳からカメラの仕事を始めた山本さんは「女性は家庭だけで人生を終えるのではなく、自分の生き方を見つけてほしい」と話す。島崎さんは「しわやシミ、白髪にマイナスイメージを持たず、ありのままの姿の格好良さを見てもらいたい」と思い、発信を始めた。他人のファッションに助言する時は、年齢と体形に合う着こなしを勧めている。

 益子さんは、40代後半でフラワーデザイン会社を起業した。「自宅にいる専業主婦の人たちに、年を重ねながら活動する私たちの姿を見て、元気になってほしい」と語る。3人は、今後も定期的に交流会を開き、SNSで自身の姿を発信していくつもりだ。

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