市況改善を受け減産を解除した(岩手県北上市のキオクシア北上工場)

半導体大手のキオクシアホールディングス(旧東芝メモリ)は17日、新たに2100億円のコミットメントライン(融資枠)を銀行団と設定したと正式発表した。材料費などの運転資金に充てる。6月を期限とする5400億円の融資についても借り換える。6月に入り2022年10月から実施していた減産を1年8カ月ぶりに解除し、生産を増やす。

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三井住友銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行が借り入れの期限延長に応じた。最新設備の購入に必要な資金についても、大手行が融資枠とは別に支援する構えだ。

キオクシアは旧型の製造装置の売却を進める一方、最新装置を取りそろえて生産量に占める先端メモリーの比率を高める。人工知能(AI)向けにデータを長期保存するNAND型フラッシュメモリーの需要が高まっており、需要に応える。

22年後半からスマートフォンやパソコンの需要が落ち込み、NAND型の市況は低迷していた。顧客の在庫が過剰になったことで、キオクシアは三重県と岩手県の工場で減産を実施し、一時は生産量を3割超落とした。24年2月には主力の四日市工場の土地を外部に売却して賃貸契約に切り替えるなど、資金繰りの対策も進めてきた。

1年超の減産で過剰在庫が解消に向かい、スマホやパソコンの需要も回復基調だ。キオクシアの24年1〜3月期最終損益は103億円の黒字(前年同期は1309億円の赤字)と、6四半期ぶりに黒字となった。キオクシアの業績改善を受けて銀行団の融資姿勢も変化した。

NAND事業しかないキオクシアは市況に業績が左右されやすい。20年に東京証券取引所への上場を承認されたが、その後の米中貿易摩擦や市況悪化によって直前で上場を延期した経緯がある。今後は新規株式公開(IPO)を再度目指し、将来の投資に備えて資金調達の手段を広げる。融資交渉に当たり、銀行団にもIPOの方針を説明したもようだ。

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