免疫細胞のmRNAを詳細に解析したデータベースを構築=東京医科歯科大学提供

東京医科歯科大学の高地雄太教授らはヒトの免疫細胞を対象に、たんぱく質の設計図である「メッセンジャーRNA(mRNA)」を網羅的に解析したデータベースを作った。長い配列を読む最新型の装置を使って精度を高めた。自己免疫疾患と認知症などの仕組み解明や治療薬開発に役立つ。

体で働くたんぱく質はDNAの配列情報が基になってできる。DNAの配列情報を写し取った設計図がmRNAだ。mRNAの配列は「選択的スプライシング」という仕組みにより、細胞の種類や状態に応じて変化する。その結果、たんぱく質の合成量や構造が変化し、細胞ごとに特有の機能を生み出す。

研究チームはRNAの配列を解読する最新装置を使い、細胞が作るmRNAを網羅的に調べた。長い配列も解読でき、精度を高められる。健康な40代女性でT細胞やB細胞など29種類の免疫細胞のmRNAの配列を網羅的に調べてデータベースを作った。

アルツハイマー病患者のデータと比較し、免疫細胞が作るmRNAの配列や量の違いを分析。アルツハイマー病の発症に関わるAPOEとTOMM40という2つの遺伝子の情報が融合したmRNAを発見した。2つの遺伝子はDNAの上で隣り合い、選択的スプライシングの異常でmRNAが融合していた。

この融合したmRNAはアルツハイマー病の発症リスクが高いタイプの遺伝子配列を持つ患者に多く存在していた。異常なたんぱく質が作られ、脳の免疫細胞であるミクログリアに集まって存在し、細胞死を促す作用を持つ。

このほか、自己免疫疾患の関節リウマチや全身性エリテマトーデスの患者の体内でも通常では少量しか存在しないmRNAが異常に多く作られていることが分かった。データベースに登録した16万種類のmRNA情報のうち、半分以上は新たに発見した。解析を進めることで病気の解明につながる。

京都大学や慶応義塾大学などとの共同研究で、成果をまとめた論文は英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載された。

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