内閣府の生命倫理専門調査会ではヒト胚モデルの研究規制に向けた議論が本格的に始まった(6月19日、東京都千代田区)

内閣府の生命倫理専門調査会は19日、万能細胞を使ってヒトの受精卵(胚)を再現した「胚モデル」の研究について、規制のあり方の議論を始めた。今後、検討内容を報告書にまとめて政府の総合科学技術・イノベーション会議(議長・岸田文雄首相)に提出し、文部科学省などが関連する研究指針の改正を検討する見通しだ。

胚モデルは、体の様々な細胞に育つ能力があるiPS細胞や胚性幹細胞(ES細胞)を特殊な条件で培養して作製する。胚を模した細胞の集合体で、倫理面での制限が多い本物の胚を使わずに、ヒトが1つの受精卵から細胞分裂を繰り返して成長していく発生初期の過程に起きる様々な現象の知見が得られるとされる。

現時点では胚の特徴の一部を示すにとどまるが、研究は急速に進展しており、将来は本物の胚により近い胚モデルがつくられる可能性がある。19日の調査会では胚モデルも胚と同じ「人の生命の萌芽(ほうが)」と位置づけるべきかどうかなど、5つの論点案が示された。今後それぞれについて議論する。胚モデルの定義や胚との倫理的な差異を確認しながら、規制のあり方を検討する。

国内では胚の研究に関する規制はあるが、胚モデルは想定しておらず、倫理的課題が指摘されている。議論を通じて胚モデルをどのように位置づけて、どこまでの研究を許容するべきかを明確化する。

調査会での議論に先立って、調査会傘下の作業部会が4月、「関係する指針の改定を検討する必要がある」とする検討結果を報告した。胚モデルが「胚とは異なるもの」と明記し、胚と同等の培養期間の規制は必要ないなどとする一方で、個体生産につながる研究や人への移植は許容されないと指摘した。

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