大量に電力を使う生成AIにより、2030年にカーボンゼロを実現するという目標が遠のく=ロイター

【シリコンバレー=渡辺直樹】米グーグルは2日、年次環境報告書を公表し、気候変動につながる温暖化ガスの排出量が4年間で約5割増加したと発表した。生成AI(人工知能)を動かすのに使うデータセンターの拡大が響いた。2030年までに温暖化ガス排出実質ゼロ(ネットゼロ)を目指すが、達成が厳しくなっている。

グーグルの23年の二酸化炭素換算の排出量は22年比13%増の1430万トンだった。基準となる19年から48%増加した。生成AI「Gemini(ジェミニ)」のサービスを世界で展開しており、動作に必要な計算資源の需要が急増している。

グーグルは約60カ国200都市にオフィスとデータセンターを持つ。大量のデータを扱う生成AIは高速処理が可能なコンピューターが必要で、動作や冷却に大量の電気を消費する。データセンターの消費電力は23年に17%増加し、温暖化ガスは供給網全体でも増加した。

グーグルは再生可能エネルギーを使う設備のほか、クリーン電力の直接調達を増やしてきた。しかし特に米国とアジア太平洋地域での電力需要が旺盛で、こうした再エネの調達能力を上回ったという。

環境報告書では、今後のゼロカーボンに向けた計画について「AIのコンピューティング強度の高まりによるエネルギーとインフラ投資の増加で困難が予想される」と説明した。

生成AIは大量の電気を消費する。国際エネルギー機関(IEA)によると、対話型AI「Chat(チャット)GPT」は通常のグーグル検索に比べて1回当たり10倍の電力を消費すると試算している。

生成AI市場をめぐってはグーグルだけでなく、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフトがAIを展開するためのインフラとなるデータセンターを世界各地で整備している。

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