雨や雪が気候変動に与える影響を明らかにした(2月、東京都千代田区)

岡山大学の道端拓朗准教授らは雨や雪の影響で、冬の南極や北極周辺で気温が上がることを解明した。コンピューターを使うシミュレーション(模擬実験)で雨や雪の粒を詳しく再現すると、地表から出る熱が宇宙空間へ逃げるのを遮って気温を高めていた。気候変動の予測精度を高めるのに役立つという。

気候には太陽から地球に降り注ぐ熱エネルギーが強く関わる。雲が日傘のように熱を跳ね返して地球を冷やしたり、逆に地上からの放熱を妨げて温めたりする効果を持つことが知られている。ただ、より細かい雨や雪の影響は気候予測の中でごく簡単にしか扱われておらず、気候変動への詳しい影響は不明だった。

研究チームは雨や雪の粒の重さや数、形の時間による変化を詳しく計算する「CHIMERRA(キメラ)」と呼ぶ独自の解析法を使った。海洋や大気の観測データから全地球規模で気候変動を予測する気候モデルと組み合わせてシミュレーションをした。雨や雪が雲と同じように持つ、熱放射に関わる仕組みを明らかにした。

冬の南極や北極周辺では降雪量の増加で地球の大気を暖める効果が強まり、地表面の気温が極端に上がる結果が出た。地表から出る熱を雨や雪の粒が遮り、宇宙空間へ逃げるのを防いだためだ。

従来の気候変動予測では、観測結果に比べて北極の温暖化進行を過小評価する課題があった。さまざまな解析法が提案されているが、今回の解析法はより現実に近い予測値が出て気候変動を合理的に説明できる。

さらに日本などの中緯度地域で、雪粒は地球の大気を冷やす効果を下げる働きをすることも突き止めた。その影響で雲の形成につながる水蒸気の凝結や水の循環が弱まり、熱帯や亜熱帯で降水量が減るメカニズムも分かった。

道端准教授は「ひょう、あられといった比較的大きい粒子も考慮した計算モデルを今後開発すれば、雷や局地的な降水などの再現性を高められる可能性がある」と話す。

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