津市の三重県総合博物館(みえむ)で開催中の企画展「標本」で、鳥羽市にある後期ジュラ紀(約1億5000万年前)の地層「今浦層」から見つかったアンモナイトの化石が展示されている。ウニのようなトゲの痕跡があるといい、研究者や地元の関係者は「すごい発見だ」と興奮を隠さない。さて、一体どんな化石なのか――。【下村恵美】
この化石は2022~23年の調査で発見された。同館の研究紀要に掲載された調査報告によると、今浦層は泥岩と砂岩から成り、これまでに3種類のアンモナイト化石が確認されている。今回の調査でも計11点のアンモナイト化石が確認された。
その中にあったのが「ヒボノチセラス属」のアンモナイト。研究者がつぶさに調べると、ヒボノチセラス属の特徴である腹部の深い「溝」と並んでトゲの痕跡があることが分かった。
「すごいモノが見つかった」と話すのは数々の恐竜化石などが見つかっている福井県大野市から調査に参加した酒井佑輔・同市教委主任(地質学)。ヒボノチセラス属のアンモナイト化石はこれまでに鳥羽を含めて国内4カ所で発見例があるが、トゲのあるアンモナイトは海外でしか見つかっていない。
ただ、残念なことにこの化石は変形したり、一部が欠けたりしていることから「新しい種」と断定するには至らないのだという。
しかし、重要性は大きい。酒井さんは今後の調査について「日本のジュラ紀のアンモナイト研究に大きく貢献する発見が今浦層で続けば、太古の鳥羽の海の様子や鳥羽で繁栄していたアンモナイトの姿が明らかになっていく」と期待を寄せる。
地層保護を強化
地元では貴重な化石が見つかったという報告が出たことで、発見現場である私有地の保護を強化。不法侵入を阻むために高さ3メートル、幅150メートルのネットを設置した。看板を取り付けて化石発見現場であることを明示した上で、環境を破壊しないよう呼び掛けている。
鳥羽では1996年に大型草食恐竜の仲間である「鳥羽竜」の化石が発掘され、化石がブームになった。今回の保護対策を講じた鳥羽恐竜研究振興会の山下直樹事務局長は「少し下火になった化石への注目が再び高まる契機になれば。調査研究のため専門家に協力しながら、貴重な現場を保護していきたい」と話している。
みえむの企画展「標本」は9月16日まで開催。月曜休館(9月16日除く)。午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)。企画展のみの観覧は一般800円、学生480円。問い合わせは同館(059・228・2283)。
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