JAXAに到着した小惑星「ベンヌ」の試料=JAXA提供

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は22日、米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「オシリス・レックス」が小惑星「ベンヌ」から地球に持ち帰った試料の一部を受け取った。JAXAは相模原キャンパス(相模原市)に新設した専用設備で試料の大きさや形、成分などを調べる。JAXAの探査機「はやぶさ2」が小惑星「りゅうぐう」から持ち帰った試料と比べることで、太陽系の誕生や生命の起源の謎に迫れる可能性がある。

JAXAとNASAは、はやぶさ2とオシリス・レックスがそれぞれ持ち帰った試料の一部を交換する覚書を交わしている。JAXAは、オシリス・レックスが持ち帰った石や砂などの総重量(121.6グラム)の0.5%にあたる約0.6グラムを受け取った。

ベンヌの試料は21日にNASAの関係者によって搬入された。JAXA側が要望していた特徴を持つ試料が含まれていることを確認し、22日に両機関の関係者が受け渡しの完了を確認する文書に署名した。

ベンヌの試料の第一印象について、JAXA宇宙科学研究所の臼井寛裕・地球外物質研究グループ長は「りゅうぐうもベンヌもどちらもモノクロの世界だが、ベンヌのほうが白と黒の濃淡の差があると感じた」と説明した。分析を通じて「どんなデータがでてくるのか楽しみにしている」と期待を寄せた。

JAXAは2024年末ごろまでに、専用設備で地球環境からの汚染を防ぎながら、顕微鏡観察や分光観測といった非破壊の分析を行う。試料の粒子を写真に撮ったり、重さや形状、含まれる大まかな有機物などの特徴を調べたりして「カタログ」としてまとめる。

試料の一部は比較研究のため、24年内をめどにりゅうぐうの試料を分析した経験を持つ研究者らを中心に配分する。25年以降は公募による試料配分も想定している。

ベンヌはりゅうぐうと同じように、地球と火星の間の軌道を公転する小惑星だ。約46億年前の太陽系誕生時の特徴が保たれていると考えられている。NASAによる初期分析では、水や有機物を含むなど、りゅうぐうと似た特徴が確認された。

一方、鉱物の成分や見つかった有機物の種類には違いもみられる。両小惑星の試料の共通点や差異を詳しく調べることで、太陽系の起源や地球の海や生命の材料との関係が明らかになると期待されている。

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