【シリコンバレー=清水孝輔】米起業家のイーロン・マスク氏が買収した米X(旧ツイッター)は17日、ブラジルにある事業所を閉鎖すると表明した。ブラジルの司法当局が同社に要求するコンテンツ内容の制限について「脅迫だ」と反発した。現地でのXのサービス提供は続ける。ブラジルで当局とXの対立が深まっている。
Xは17日、公式アカウントを通じて「昨夜、(最高裁判事の)アレシャンドレ・モラエス氏から検閲命令に従わなければブラジルでの法定代理人を逮捕すると脅迫を受けた」と表明した。「スタッフの安全を守る」ことを事業所の閉鎖の理由に挙げた。
Xはブラジル当局から特定のアカウント削除と個人情報の提出を求められた。同社はブラジルだけでなく米国やアルゼンチンの居住者も含むと説明した。従わなければ代理人が罰金や禁錮刑といった処罰を受ける可能性があると当局から通知されたという。
マスク氏自身も17日、Xに「ブラジルにあるXのオフィスを閉鎖するのは難しい決定だった。だが(違法で)秘密の検閲と個人情報を渡す要求に従えば、恥じずに自らの行動を説明できないだろう」と投稿し、現地の司法当局を批判した。
ブラジルではモラエス氏が偽情報対策などをめぐり、前大統領のボルソナロ氏やその支持者らの言動に目を光らせてきた。マスク氏は4月、司法当局が命じたアカウントの制限を全て解除すると表明し、事業閉鎖も検討する考えを示していた。
マスク氏はSNSに厳しい姿勢を示すモラエス氏に対し、X上で辞任を求めるなど反発を示してきた。17日にも「モラエスが去るべきなのは疑いようがない。法律を繰り返し破る判事がいるのは正義ではない」と主張した。
マスク氏はXでの拡散力を生かして政治関連の発信を続けている。12日には米共和党のトランプ氏とX上で対談し、11月の米大統領選に向けて協力する姿勢を示した。マスク氏はXが本社を置く米国に加えて、中南米の政治に対しても影響力を強めようとしている。
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