研究成果について説明する神戸大学の京極博久助教(右端)ら(東京都千代田区)

理化学研究所の平谷伊智朗チームリーダーらは受精直後の細胞では通常の哺乳類の細胞とは異なる仕組みでDNAを複製することをマウスの細胞で見つけた。成長の初期段階である胚が1個や2個の細胞からなる初期のころに起きていた。今後詳しい仕組みを調べる。

高橋沙央里研究員や神戸大学の京極博久助教らとの共同研究の成果で、論文が英科学誌ネイチャーに掲載された。

ヒトをはじめとする動物は受精卵が分裂を繰り返して成長する。分裂前には遺伝情報を担うDNAを複製して2つの細胞に分配する。哺乳類の受精直後の細胞では通常の細胞に比べ、DNAを折り畳んだ染色体が異常な位置で切れたりして正しく分配されないことが多い。ただこの詳しい仕組みは不明だった。

研究チームは独自の解析手法を使い、マウスの胚でDNAを複製する様子を調べた。通常の細胞では長く連なったDNAをいくつかの領域ごとに順番に複製する。だが1個や2個の細胞からなる初期の胚では、DNAのあちこちで一斉に複製が起きていた。複製の速度は通常の細胞の30分の1程度と遅かった。細胞が4個以上になると、通常の細胞のようにDNAを領域ごとに順序立てて複製するようになった。

こうした複製が起きる背景は分かっていない。ただ初期胚では細胞同士が同調して分裂するなど通常の細胞と異なる特徴があることが知られている。こうした特徴がDNAの複製の仕組みの違いに関わる可能性があるという。今回発見した仕組みがヒトでも同様に起きているかは分かっていない。京極助教は「初期胚に関する研究は今後さらに進むとみられ、わくわくしている」と話す。

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