研究成果を発表する理研の北島智也チームリーダー㊧(18日、東京都千代田区)

理化学研究所の研究チームは、細胞内で遺伝情報を継承する役割を担う物質を、人工的に作った。遺伝情報を伝える仕組みの異常は、不妊やがんなどにつながる。新技術を応用し、遺伝情報の継承を操作できれば、関連研究に役立つ可能性がある。

北島智也チームリーダーらによる成果で、19日付で米科学誌「サイエンス」電子版に掲載された。

研究チームが人工的に再現したのは「動原体」と呼ばれるタンパク質の集合体だ。動原体はDNAが折り畳まれた「染色体」、筒状のタンパク質「微小管」にそれぞれくっついている。

細胞が分裂する際に動原体が微小管に引っ張られ、染色体が2つに分かれ新しい細胞に分配される。このとき動原体は、背中合わせの2方向から微小管に引っ張られるよう調節する機能がある。

動原体は100種類を超えるタンパク質でつくられているが、このうち微小管と直接結合する2つのタンパク質に着目した。直径約2マイクロ(マイクロは100万分の1)メートルの人工ビーズに2種類のタンパク質をつけて、動原体を再現した。細胞に注入すると、自然の動原体と同様に、2方向から引っ張られた。

北島氏は「ビーズを用いて細胞内の構造体を作るというのは非常にシンプルだが、これまで誰もやったことがなかった」と話した。染色体の分配を人工的に実現できる可能性に言及し、今後の研究への展開に期待を示した。

北島氏らの研究チームは7月、老化した卵子で染色体の分配の異常が起きているとする研究成果も公表している。分配の異常は不妊や流産、先天的な病気につながるとされる。

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