11月15日、南米における自然保護活動や気候変動対策資金の提供は、アマゾンの熱帯雨林など象徴的な生物多様性ホットスポットに集中し過ぎており、砂漠や湿地帯、その他の重要な生態系が危険にさらされていると、環境保護活動家や先住民リーダーらが警鐘を鳴らしている。写真はチリ・アタカマ砂漠でサンドボードを楽しむ男性。10月29日撮影(2024年 ロイター/Ivan Alvarado)
南米における自然保護活動や気候変動対策資金の提供は、アマゾンの熱帯雨林など象徴的な生物多様性ホットスポットに集中し過ぎており、砂漠や湿地帯、その他の重要な生態系が危険にさらされていると、環境保護活動家や先住民リーダーらが警鐘を鳴らしている。
チリのアタカマ砂漠からコロンビアの山岳高原地帯、ブラジルの熱帯湿地帯やサバンナに至る他の生態系にも、もっと関心が払われるべきだという。
アタカマ砂漠自然研究所のセシリア・モルガソ所長は、政治家や環境保護活動家でさえ、再生可能エネルギーへの移行が砂漠やサバンナ、草原などの生態系に及ぼす影響に十分な注意を払っていないとし、砂漠に関しては「通常、何の役にも立たないと考えられている」と語る。
チリの銅とリチウム埋蔵量は世界最大で、そのほとんどがアタカマ砂漠にある。しかし、再生可能エネルギーに不可欠なこれら金属の採掘と、風力および太陽光発電所による砂漠への悪影響は強まりつつある。
モルガソ氏は、こうしたプロジェクトは砂漠の生態系を危険にさらすが、「世界的なエネルギー需要を前にして、少数派の人びとがノーと言うのは難しい」と吐露。「問題は、砂漠の生物多様性の豊かさをどう評価するかだ」と話した。
コロンビアで今月開催された国連生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)では、再生可能エネルギープロジェクトが急増している生態系よりも、アマゾンを中心とする熱帯雨林の保護に重点が置かれた。
エネルギー転換の問題は、アゼルバイジャンの首都バクーで開催中の国連気候変動枠組み条約第29回締約国会議(COP29)の主要議題となっている。主催国アゼルバイジャンは、各国に再生可能エネルギーを推進するため、2030年までに世界的なエネルギー貯蔵容量を6倍の1500ギガワットに増やすという誓約への署名を促している。
また、国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、各国が二酸化炭素(CO2)排出削減の公約を達成するには、重要鉱物の市場価値が現在の約3250億ドルから30年までに55%増加する必要がある。
金からリチウムに至る鉱物需要の高まりは、世界の生物多様性にとって圧力の増大につながる。
無視された生態系
ブラジルでは、森林伐採の阻止やアマゾンの熱帯雨林の保護に多くの注目が集まり、資金援助も行われている一方で、その他の生物多様性に富む生態系はほとんど無視されてきた。
ブラジル北東部では熱帯乾燥林のカーチンガで、風力発電所や太陽光発電所など再生可能エネルギープロジェクトが拡大している。
「文字通り、私の領地の真ん中を横切って送電線が引かれている。これは長期的な影響をもたらすだろう」と、先住民のリーダー、クリスティアーネ・パンカルル氏は語った。
アマゾンの熱帯雨林は、ブラジル国内の他の生物多様性豊かな生態系と比較して、より手厚い法的保護を受けている。
環境保護と先住民の権利擁護を目的とする団体、社会環境研究所によると、ブラジルの保護地域の約80%はアマゾン熱帯雨林がある北部に位置している。
農地拡大から自然地域を守るための政府規制もアマゾンでは厳しく、農家は土地の80%の樹木を残すことが義務付けられている。ブラジルの他地域では、その割合が20%だ。
アマゾン熱帯雨林以外の生物多様性地域は、農業や牧畜の拡大による圧力にも直面している。パンカラル氏は「中西部全体がアグリビジネスに転換している。大豆からトウモロコシ、畜産まで何でもだ」と語り、環境面の対策が行われていないと訴えた。
国際貿易規制でも、他の生態系に比べてアマゾンの熱帯雨林により多くの保護が与えられている。例えば、欧州連合(EU)は26年に森林伐採に関連する商品の輸入を禁止し、アマゾンなどの森林地帯を保護する予定だが、草原やサバンナなどの他の生態系は対象外となる。
やはりアマゾンの広大な熱帯雨林を擁するコロンビアでも、アマゾン以外の生態系の保全に気候変動対策資金がほとんど割り当てられていないと先住民リーダーのカミロ・ニーニョ氏は言う。同氏は、自身が暮らすシエラ・ネバダ山脈が、アマゾンの森林に水を供給する河川の水源として不可欠だと強調、「だから保護は全体的に行わなければならない」とした。
環境保護活動家のヤナ・ゲボルジャン氏は、森林以外の生態系についてはほとんど知られていないと指摘。「まだ十分に理解さえされていない生態系があり、その分布を世界的にマッピングできるだけの十分なデータが不足している」と述べた。
ゲボルジャン氏が率いる官民組織「地球観察グループ(GEO)」は先月、26年までに世界の生態系をすべて地図化することを目的とした「グローバル・エコシステムズ・アトラス・イニシアティブ」を開始した。
目的は、軽視されたり無視されたりすることの多い自然地域の健康状態を把握するためのデータ収集だ。
「孤立して存在している自然空間はひとつもない」と先住民リーダーのパンカルル氏は語った。
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