アラスカの永久凍土の森林でCO2の排出量と吸収量を20年間測定した=大阪公立大提供

大阪公立大学などの研究グループは、永久凍土が広がる米国アラスカ州の森林地帯の一部で、降水量の増加と植物の成長によって二酸化炭素(CO2)の吸収量が増加傾向にあると突き止めた。地球温暖化による凍土の融解でCO2の放出が増えるのか、降水や植物の成長で光合成による吸収が増えるのか議論が分かれていた。高緯度地域の気候変動の影響をより詳細につかむのに役立てる。

氷点下の状態が2年以上続く永久凍土は北半球の陸地面積の約4分の1を占める。植物が凍ったままで保存されている。一般的な土壌よりもCO2やメタンなどの温暖化ガスを多く含み、融解や火災によって大気中に放たれる懸念がある。一方で、夏には土壌の表面が解けて植物が育ち、光合成量が増えてCO2を吸収する作用もある。

植山雅仁准教授らのグループは周囲約100メートルの大気中のCO2の総量を評価できるタワー型の観測装置をアラスカ州の森林に設置した。2003年から22年まで連続で観測し、03年から12年までを前半、13年から22年を後半に分けて評価をした。

その結果、後半は前半に比べてCO2の吸収量が約2割増えていたと分かった。同時期に降水量の増加と植物の成長が見られた。水分と夏の光合成の増加が要因になっていると突き止めた。

観測地点はアラスカの中でも気温の上昇が緩やかな場所だ。進行がより急激な地域では、排出の方が上回る可能性もある。今回は20年分のデータを見積もった。植山准教授は「温暖化の影響をより正確に調べるには、30年以上の長期観測も必要になる」と指摘する。

研究は北極域の温暖化の影響に関する調査を目的に、文部科学省の支援のもと2020年6月に始まった「北極域研究加速プロジェクト」の一環で実施した。

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