TSUBAME4.0が東工大すずかけ台キャンパスで稼働を始めた

東京工業大学は新型のスーパーコンピューター「TSUBAME4.0」を4月に稼働開始した。最新の半導体を使って人工知能(AI)向けの演算性能を前世代の約20倍に引き上げた。大規模な生成AIの学習などに活用する。

東工大は2006年にTSUBAMEシリーズ初代の「1.0」を稼働し、その後世界で初めて「画像処理半導体(GPU)」を載せた大規模スパコン「1.2」を発表するなど、スパコン構築で国内の他大学に先駆けてきた。前世代「3.0」は一時期、世界一の省エネ性能を誇った。

約7年ぶりの新型となる4.0はAI向け計算の性能を3.0の約20倍に高めて、国内のスパコンとして「富岳」(理化学研究所、富士通)に次ぐ2位に躍り出た。米エヌビディア製の1個約500万円(一般的な販売価格)のGPUの性能を一部高めた特注品を960個用いた。開発費は60億円以上という。東工大のすずかけ台キャンパスに日本ヒューレット・パッカード(HPE)と共同で設置した。

東工大の益一哉学長は「(10月の)東京医科歯科大学との統合後も重要な役割を果たすだろう」と語った。スパコンを運用する学術国際情報センター長の伊東利哉教授は開発を振り返り、「半導体不足や円安で困難になりかけたが、辛抱強く調達を続けた」と話した。

期待される用途が生成AIだ。生成AIとは、文章や画像を自在に生み出せるAIのことで、米オープンAIが22年末にサービスを発表して以降、世界的な開発競争が続く。あらかじめ膨大なテキストや画像を読み込ませて意味を理解させる必要があり、その工程にスパコンを用いている。

計算のための装置が多数並んでいる

AI向けの演算性能を高めた4.0は、学習時間の短縮や大規模な学習が可能になるとみられる。既に複数の生成AIの研究者との連携を始めており、国立情報学研究所(NII)は日本語に特化した生成AIの大規模言語モデル(LLM)の研究に使う。夏ごろまでにオープンAIの過去のサービスと同規模の日本語LLMをつくる。薬の分子が細胞に入り込む際の精密なシミュレーション(模擬実験)にも使われるという。

スパコンの内部。黒いチューブには冷水が通り、半導体を冷やしている

東工大以外の研究者も産学問わず利用手続きをすれば有償で使える。4.0では利便性を高めるべく、ウェブブラウザー経由でアクセスできるようにした。東工大は6年間4.0を運用し、その後は後継機の導入などを検討する予定だ。

(土屋丈太)

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