皆さんは自動車レースについてどのようなイメージをお持ちですか? クルマ好きな人も含め「男がやる競技」という印象が強い人も少なくないかと思います。そんな中、5月19日日曜日に開催されるスーパーフォーミュラ第2戦で注目を集めているのは……女子高生レーサー??

文:段純恵/写真:JRP

■あまりにも若すぎるレーサー

お写真右に写るのが野田樹潤さん ご年齢はなんと18歳!

 開幕から2ヶ月ぶりとなるスーパーフォーミュラ(SF)の第2戦が5月19日にオートポリスで開催される。

 そこで話題の中心となるのは初戦圧勝のSFリーダー野尻智紀(34)でもなければ、休場からの復帰戦を戦いきり3位表彰台に上がったベテラン山本尚貴(35)でもなく、同じルーキーといってもすでにF1でテストドライバーを務める岩佐歩夢(22)もメじゃない存在感を発揮しているJuJuこと、野田樹潤(18)であることは明白だ。

 『女子高生(現在は女子大生)・最年少』というキーワードに引き寄せられて、ふだんモータースポーツに関心を示さないマスコミが押し寄せた開幕戦鈴鹿のメディアセンターは、F1開催時もかくやの大賑わいだった。

 セッション終了後に行われるドライバーのカコミ取材でも、初顔の記者たちが野田を囲んで押しくらまんじゅう状態。「初レースはどうでしたか?」といった質問を投げかける記者たちに、笑顔でハキハキと言葉を選びながら人の気をそらさない対応している野田の佇まいは完璧にプロフェッショナル。

 そのまま芸能界デビューさせたいようなタレント性の高さに筆者も大いに感心させられたが、そんな場で「F1のライセンス取得に関係のない海外レースに参戦するのはなぜ?」と混ぜっ返すのも大人げないのでまんじゅうの一員になるのは遠慮した。

■選手のレーサーとしての資質とは?

レーサーの腕前はまだまだ発展途上か?

 そもそも筆者がドライバーに興味を持つポイントは、その選手のレーサーとしての資質にある。目の覚めるような走りや思わず手を打つバトルをみせたり、自分の腕と技を駆使し70%のマシンで90%の結果を出す選手なら、10代だろうが50代だろうが突撃してでも話を聞きたい。

 レース以外の時間を教室(リモート授業ならパソコン前か)でペンを握るか畑の真ん中で鍬を握るかは、選手の人となりを知る背景としては大事なことだけれど、女子高生であることが走りや結果に直接関係すると筆者は考えていない。

 資質についてだが、開幕前テストと開幕戦での野田の走りを見た限り、正直、筆者はあまり興味を引かれなかった。

 SFのマシンを思い通りに扱うための筋力も持久力も物足りなく思えたし、余裕のなさからか、前だけを見ているような走りは、後ろを走る他の選手にとって『危険』となりうる存在に思えた。

 タイムも1日目で上げても2日目には1日目のスタートと同じ地点に戻ってしまうあたり、20、21年SFに挑戦していた女子選手の先輩タチアナ・カルデロンの参戦当初のパターンに似ているが、カルデロンの場合、レースを重ねるごとにタイムの戻り幅が小さくなっていったし、何より耐久レースの経験で培った、常に前後の状況に目を配っている走りに不安を感じさせられることはなかった。

 要するに、これが10代男子なら「SFライツかF4クラスでしっかり勉強してからでも良いのでは…」と案じてしまうところだが、そんな風に感じたのはオバハン的心配性丸出しの筆者くらいだったらしい。

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■次世代レーサーとしての活躍に期待

性差を問わないカテゴリーへの挑戦を選ぶ潔さ、周囲の期待を上回るような野田の活躍を祈っている

 開幕戦を取材したメディアのほとんどは予選19位決勝17位の野田を「よくやった!」と褒め、将来のF1ドライバーとしてその才能に期待を寄せる記事があふれていた。

 開幕前テストの後、「レースになったら2、3周で自滅するでしょ」と見ていた某チーム関係者は、野田がSF初戦を完走したことに驚きを隠さなかったが、野田がドライバーとしてまだ成長途上で、その才能の伸び代が未知数であることは誰の目にも疑いない。

 性差を問わないカテゴリーへの挑戦を選ぶ潔さ、負けん気の強さも筆者が敬愛する選手の一人で米インディカーシリーズで優勝もし、現在はF1のテレビ解説者を務めるダニカ・パトリックを彷彿とさせて頼もしい。

 そのダニカは現役時代、コース上では野郎を相手に何度もブチ抜くバトルを見せ、マシンを降りては自分にフザけた走りをみせたドライバーに容赦なく平手打ちをカマしていたが、サーキットを離れれば(活動資金稼ぎの一環である)ファッションモデルとしてエレガントに装い、頭脳のキレの良さを感じる発言と微笑で人々のハートを鷲掴みにする魅力的な人物として活動していた。

 いまお世辞にも人気が高いとは言いがたいスーパーフォーミュラの、人気高揚に必要なものの一つが『日本のダニカ』になりうる存在で、その筆頭候補が野田なのだろう。

 野田自身、自覚の有無はさておき、開幕戦前後のテレビ出演やフォーミュラEの物流スポンサーのアンバサダー就任、大学入学に欧州レースへの参戦など、まさに八面六臂の活動で注目度はさらに上昇、周囲の期待に応えつつある。

 これで成績が伴えばまさに鬼に金棒となるはずで、その可能性を推し量る試金石となるのが第2戦オートポリスだ。

 野田もF1を目指すと公言する選手の一人なら、SF2戦目だの初めてのコースだのといった甘えは許されない。数字の結果には現れずとも才能を感じさせる光る走りをレース関係者の前で披露しなければならない。

 実力と人間的魅力を兼ね備える無二のレーシングドライバーとなるのか、話題先行のお客様扱いドライバーとなるのか。

 周囲の期待を上回るような野田の活躍を祈っている。

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