2023年の盗難認知件数(盗難台数)のワースト1位はアルファードの700台だが、盗難台数が最も多い都道府県はどこだったか、ご存じだろうか? それが千葉県なのだが、その理由について自動車生活ジャーナリストが追った。

文/加藤久美子、写真/AdobeStocak(トビラ写真:STOCKSTUDIO@AdobeStock)、加藤久美子

2023年盗難ワースト1位は千葉県で最新の検挙率は19.2%! 野田市、印西市で盗難が激増中!!

茨城県では盗難ワースト1位が連続した時代もあったが、近年盗難台数は減少傾向にあり、検挙率も大幅に上がっている

 警察庁の発表によると、2023年1年間での盗難台数ワースト1位は千葉県である。カッコ内の数字は検挙率。なお、盗難が成立しなかった「未遂」は含んでいない。

1位 千葉県     746台 (25.5%)

2位 愛知県     698台 (23.8%)

3位 埼玉県     683台 (21.4%)

4位 茨城県     615台 (39.3%)

5位 神奈川県  461台 (49.5%)

6位 大阪府  447台  (22.4%)

 最新のデータとなる2024年1~3月の盗難台数と検挙率は以下のとおり。

1位 千葉県     203台 (19.2%)

2位 埼玉県     200台 (25.5%)

3位 愛知県     179台 (29.6%)

4位 茨城県     136台 (47.8%)

5位 大阪府     114台 (17.5%)

6位 神奈川県 113台  (28.3%)

 こうしてみると、2023年通年でも2024年1~3月でも上位6府県は同じであり、いずれも千葉県がトップとなっている。千葉県は2024年に入ってから検挙率がついに20%を切ってしまった。

 千葉県にかぎったことではないが、一般的に自動車盗の検挙率は盗難台数に反比例する。台数が多ければ多いほど検挙率が下がる傾向が強い。

 が、このような状況でも茨城県だけは例外といえる。茨城県では盗難ワースト1位が連続した時代もあったが、近年盗難台数は減少傾向にあり、検挙率も大幅に上がっている。2023年通年では39.3%、2024年1~3月では47.8%と5割近くまで上昇。ワースト1~6位の府県のなかでは断トツに高い検挙率である。

筆者によれば茨城県警は車両盗難被害に対するメディアからの取材もきちんと対応するという

 この数字は自動車盗難に対して茨城県警が盗難被害者に真摯に向かい、きちんと捜査をしてきたことの結果だと筆者は考える。茨城県警はメディアの取材に対しても丁寧に対応することで知られており、筆者もこれまで何度か電話取材、対面取材した際もしっかりと対応してくれたことを覚えている。

 一方、最新データで検挙率2割を切る千葉県警は筆者が知るかぎり複数の盗難事案において茨城県警とは真逆の対応である。

■千葉県での自動車盗はランドクルーザー+アルファードで74%!

2023年の盗難被害車車種上位5車種(千葉県警)

 2023年の盗難台数1位の千葉県では最近、どんなクルマが盗まれているのだろうか? 以下は2024年1~3月の自動車盗について千葉県警が発表したデータである。

■被害上位5車種

1位 ランドクルーザー 62.1%

2位 アルファード 11.8%

3位 レクサス 10.5%

4位 プリウス 9.8%

5位 ハイエース 5.9%

 上位5車種のなかで圧倒的に多いのがランドクルーザーで6割強。確かに毎日のようにSNSの盗難車情報では今年に入って特にランクルが多いと感じる。

車両盗難の被害地域が偏っている千葉県

 また、被害地域が偏っていることにも要注目である。特に多い地域は野田市と印西市だ。2024年1~3月までのわずか3カ月で野田市は20件、印西市は24件と県内でダントツに多い。

 色分けされた地図を見てみると盗難が多い地域は野田市や印西市周辺でやはり盗難多発地域の茨城県と埼玉県に挟まれたエリアでもある。

 都道府県別のワースト1位である千葉県であっても館山や鴨川、勝浦などの南房総エリアはほぼ「発生なし」である。同じ県内でなぜ、ここまで盗難台数が違ってくるのか?

■野田や印西周辺にはヤードの存在が……

先代型となるランクル200もランクル300も窃盗犯のターゲットになっている

 それにはとある理由が考えられる。盗難の多い野田・印西周辺には数多くの「ヤード」が存在していることが関係しているのかもしれない。

 ヤードとは自動車を解体し、部品として流通させるための作業場所。高い塀に囲まれていて、中に入ってしまえば外から中の様子はわからない。なお、千葉県のヤード数は700カ所以上あり、それは全国にあるヤードの約4分の1を占めている。

 そのようなエリアでなぜ盗難が多いのか? それは盗んだクルマをいち早くヤードに運び入れることが可能だからだ。盗難車が人目につかないうちにヤードに運んでアッという間に解体……もちろん、車台番号など「出自」がわかる部分は削り取ってわからないようにする。

 近年はSNSの急速な普及で盗難情報はオーナーが被害に気づいた直後から拡散が始まる。防犯カメラの映像を公開するケースも増えており、盗難の手口や状況、窃盗犯が移動に使うクルマなど含めて非常に短時間で拡散され、オーナーや関係者、警察などに続々と目撃情報が寄せられることも珍しくない。そこで、できるだけヤードに近い場所で盗みを働くことが重要となってくる。

 野田・印西近辺に住んでいる人はもちろん、茨城、埼玉、愛知、大阪、神奈川など盗難多発エリアに住んでいる、ランクルやアルファード、レクサスのオーナーは特に愛車を盗まれないよう万全な対策をとってほしい。

■価格は張るが、やはり高級セキュリティの装着がおススメ

千葉県野田市内で盗難された34GT-R。ナンバーが34→38に変えられていた

 何度も書くがお手軽防犯装置の代表格であるハンドルロックや1万円以下の安価なタイヤロックは短時間で破壊される。「AirTag」、「TILE」、「EUFY」などの「忘れ物防止タグ」もつい最近,仕様が大きく変わって盗難車の追跡には使いにくくなっている。

 GPSを愛車に仕込むオーナーもいると思うが、こちらも「ジャマー」(妨害装置)を使う窃盗犯が増えてきており、以前のように盗まれたクルマの追跡に役立つアイテムとは言えなくなりつつある。

 ではどうすればいいのか? それにはやはり「ゴルゴ」、「パンテーラ」、「イグラ2」「バイパー」、「クリフォード」などの高級セキュリティをCANインベーダーやGAME BOY対策も含めて対応できるセキュリティショップで取り付けることを強く薦めたい。

 30万~40万円の価格帯が主流となるが、安価で効果が薄い防犯グッズを複数つけたり、防犯カメラを多く設置したりするより何倍も防盗対策としては効果的だ。

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