2014年11月に逝去した自動車評論家、徳大寺 有恒。ベストカーが今あるのも氏の活躍があってこそだが、ここでは2013年の本誌企画「俺と疾れ!!」をご紹介したい。

 ガソリンスタンドが少なくなっている当時の現状に思うこと、アメ車好きの読者へ、クルマに興味を示さない息子を案じる読者へ……。圧倒的な経験に基づいた氏の言葉は今なお色褪せない。

(本稿は『ベストカー』2013年4月26日号に掲載したものを再編集したものです/著作権上の観点から質問いただいた方の文面は非掲載とし、それに合わせて適宜修正しています)

■もうすぐ桜が咲く

ゴットリープ・ダイムラー…ヴィルヘルム・マイバッハと共同で内燃機関を作り1885年に二輪車に搭載、翌1886年に駅馬車にそのエンジンをつけたものが、「ダイムラーモトール・キャリッジ」と呼ばれる世界初の4輪車だ

 少し前、私は“自動車誕生100年”なるお祝いのイベントに行った。自動車は19世紀の終わりにヨーロッパの多くの人によって発明されたが、メルセデスベンツの始祖ゴットリープ・ダイムラーもその一人だった。

 そのゴットリープ・ダイムラーの息子パウル・ダイムラーがカール・ベンツのベンツと合併しダイムラー・ベンツができた。

 これが世界で初めての自動車会社だとダイムラーはするが、フランスは自動車の発明はフランスだと主張している。

 しかし、初めての自動車メーカーはダイムラーだと多くの人が認めている。つまり、それまでの自動車はバッテリーによる電動モーターや蒸気機関によるものであったが、このエンジン、つまり内燃機関の発明こそが自動車をここまで発展させたのである。

 しかし、それから百年あまり、この日本ではガソリンスタンドがなくなりつつある。いわゆる“油を売る”ことは、そうもうけの出る話ではなくなったのである。

 ガソリンスタンドはクルマの発達につれて大いに盛んになり、どの街にも1、2店はあったが、今はクルマも少なくその数は激減してしまった。

 しかし、ガソリンスタンドは町の中央にあり、敷地も広いからスーパーをはじめ多くの店と併設されている。しかも、地方では駐車場はマストだから、スタンドをおくことは利用価値があるのだ。

 ガソリンは現在レギュラーで1L 150~160円くらいだから、大きな敷地を考えれば、1日に何十台以上のお客がなければ成り立たない。都会なら土地の代金も高い。というわけで、あちこちでスタンドの廃業が見られる。

 私は決まったところでガソリンを入れるわけではないが、自宅が世田谷の岡本というところなので、環状8号線のそばにあるスタンドを利用している。

 我が家はワイフもシトローエンに乗っているから、クルマは常に3、4台使っているのでガソリンの消費量は少なくない。私はVWゴルフをはじめ多くのクルマを使うから、月額で3万~3万5000円ほどの出費になると思う。

 その環状8号線のスタンドでクルマを洗ったりしている。女房のシトローエンはマイレージもわずかなものなので、時おり、私が乗ればオイルを見たりしている。

 私のクルマはVWゴルフカブリオレだが、こいつはほんとうに手がかからない。ソフトトップだが、もう少し暖かくなったらオープンにする機会もあるだろう。

 箱根ターンパイクの桜並木は美しいから、今年は女房とターンパイクをオープンにして走ろうと思っている。

■アメ車が好きだ

ビュイック・リーガルワゴン…専門店もあるくらいのマニアには人気モデル。V6、3.3Lのゆったりした走りは癒やしを感じさせるものだ

(ビュイック・リーガルワゴンを愛車とするアメ車党の読者からの、「アメリカのライフスタイルが日本に浸透していますが、クルマだけはあまり受け入れられないのは不思議だ」「アメ車が見直されるといい」という声に)

*   *   *

 そうですか、リーガルワゴンですか。

『アメリカン・ウェイ・オブ・ライフ』ですね。いいですね。ぜいたくですよ。しかし、円安もあって、ガソリンは少し高くなりました。しかし、アメリカの長大なステーションワゴンはいいですね。いかにもアメリカの生活ですよ、あれは。

 アメリカンステーションワゴンでスーパーに行きたいところですが、日本の駐車場は少し小さいかもしれませんね。特に私の好きなフォード・カントリー・スクワイアはフルサイズで、5.7LのV8エンジンは240馬力を発生。ボディはウッドパネルを貼ってというのが定番です。

 アメ車のフルサイズワゴンはいかにも中流を思わせいいものでしたよ。

 全盛時代はクライスラー。クライスラーのV8はパワフルでしたから、スポーティでしたね。クライスラー・ニューヨーカーのワゴンはV8、7.2Lで350馬力もありましたから。

 ただし、私がアメリカでレンタルしたのはプリムスやダッジが多かったですね。

フォード・カントリー・スクワイア…ウッドパネルを装着したフルサイズワゴンの代表。V8、5.7Lが生む大型客船のような乗り心地はフルサイズにしかできないものだ

■5歳の息子とクルマ

(クルマにまったく興味を示さないという5歳の息子を持つ読者の「若者と同じように、子どものクルマ離れも進んでいるのかもしれません」という声に対して)

*   *   *

 もう少し待ってください。息子さんが女性とデイトするようになれば、クルマのありがたさがわかるはずです。

 おっしゃるように自動車産業は日本のお家芸で今や、世界中で日本車のクオリティの高さは評判になっています。

 そしてクルマが産業に与える影響はものすごいものだときっとわかります。しかし、息子さんが運転する時のクルマはどうなっているのでしょうか?

 きっとオート○○といった名前のクルマでしょう。

 話を変えて自動車産業に代わる基幹産業とは何でしょう?

 私はちょっと思いつかないのですが、人力によるサービス業になるという人もいますが、どうなのでしょう。

■プジョーとシトロエン

(ティーダを愛車に持つ読者からの、「輸入車に乗り換えたい。初めて乗る輸入車としてシトロエンC3かプジョー208ならどちらがおすすめか、また2台はどう違うのか」と聞かれて)

*   *   *

 プジョウとシトローエンではプジョウのほうがオーナーです。シトローエンをプジョウが買収したのです。

 日本ではこの2社は五分と五分ですが、このクラスに関してはシトローエンのほうが少し面白いかもしれません。

 しかし、プジョウのまじめさも捨てがたい。あとは●●●さん(読者の方のお名前)が、自分で乗って比べるしかありません。

 お住まいの川崎ならば、ディーラーはたくさんあるはずです。お気に入りの乗り味を選んでください。

■ヴィヴィオ T-TOP

(ヴィヴィオ タルガトップを愛車にする読者からの、「徳大寺さんはヴィヴィオのタルガトップに乗られたことがありますか?」という声に)

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 残念ながら乗る機会を逸しています。

 しかし、臥牛山さんの話を聞いても日本車のクォリティはたいしたものだと思います。約20年前に軽自動車でタルガトップを採用するなど、当時の常識では考えられないことだと思います。

 スバルも●●●さん(読者の方のお名前)の話を聞けば喜ぶでしょう。お説のとおり、日本のメーカーはいまだ生産台数が最も大切なのでしょう。

 日本のメーカーは少し生産台数を忘れたら? と思いますが、メーカーに言わせれば、“台数が出るから安くクルマも売れるんだ”というでしょう。

 しかし、日本のクルマはもう行きつくところまで行っていますね。軽自動車でもコンパクトでも世界中がマネをするような技術をみせてほしいですね。

 燃費競争はどんどんおやりなさいといいたいですね。そして今の測定方法を工夫し、実用燃費とカタログ燃費を近づけてほしいですね。

ヴィヴィオ T-TOP…富士重工40周年を記念して3000台限定で発売されたタルガトップモデル。リアウィンドウは電動格納式で高田工業がトップ部分を製作した
ヴィヴィオ T-TOP

■軽のSUVが選べない

(豪雪地域に住む読者からの「軽のSUVの選択肢がない」と嘆く声に)

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 パジェロミニもジムニーも私の好きなクルマですが、ジムニーは最もヘビーデューティなところが気にいっています。

 SUVはその力強い走りのためにファイナルギアが低くエンジンは絶えず高回転を強いられます。しかし、ジムニーの目的からいって仕方がないと思います。

 軽自動車のSUVは一時たくさんあったのですが、現在はなくなりました。しかし、ごく趣味的なクルマですから、2つか3つでいいでしょう。

 小さなSUVは少し高価でも、雪の多い地方では、足代わりとして必要ですから、4WD、ATという仕様で、できれば最小回転半径の小さいクルマを作ってほしいですね。

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