中国車のGEELYは傘下にボルボを持つ吉利汽車のブランドのひとつだが、ラリードライバーの新井大輝氏にGEELY製セダン、「星瑞L」に群馬県内の公道で試乗してもらった。
文:新井大輝/写真:中島仁菜、ベストカーWeb編集部
■かの『頭文字D』の聖地、榛名山で何が?
群馬県の榛名山で何やら面白いことをやっているとの噂を聞きつけて、漫画『頭文字D』(イニシャルD)の聖地として圧倒的な知名度を誇る伊香保温泉へやってきた。平日ということもあり、有名な階段を横目に榛名湖までのワインディングを気持ちよく駆け上っていく。
伊香保温泉の石段では観光客が少ないなと思っていたのも束の間、徳富蘆花の記念館を過ぎると、イニシャルDの世界観を彷彿とさせるようなクルマばかり走っていた。
平日というのにかなりの台数のクルマが走っている。ナンバープレートは90%以上が県外のナンバーということに気づく。改めてこの榛名という山がクルマ好きたちから愛されていると感じる光景であった。
今回は何と中国の自動車メーカーの「GEELY」の試乗インプレッションの誘いを受けていた。実は中国の自動車メーカーに乗るのは今回が初めてということもあり、先入観がない状態でインプレッションができるのではないだろうか、と終始楽しみであった。
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■EVで目覚ましい躍進を遂げる中国メーカー
ここ数年間で中国の自動車産業の成長は目を見張るものがある。特に電気自動車の産業に関して言えば、世界中のどこの国の自動車メーカーよりも早く開発していた印象を受ける。
調べているとGEELYという自動車メーカーは今まで何度か日本での試乗会をやっているのだが、日本への市場投入は“現段階“までは考えていないということであった。
ではなぜ日本で売らない商品を日本で試乗させているのか。関係者各位に確認してみると、中国のなかでも日本という国で試乗会やイベントを催すことがひとつのブランディングとしての意義を持っているという話であった。
それは日本という国が中国に自動車大国として認知されているということを意味している。筆者としても日本という国が一種のブランディングの効果として位置づけられていることは誇らしい。
例えるなら、日本のサッカー少年が本場ブラジルへ渡ってプレーしたいと思う、それに似ているのではないだろうか。中国からしてみれば日本という数々の名車を生み出してきた自動車産業の本場で、自国のクルマを走らせて比較してみたいと思うのは自然のことなのではないだろうか。
■GEELYのハイブリッドセダン、星瑞Lにいよいよ試乗!
さて前置きが長くなってしまったが今回試乗するGEELYのクルマは何とハイブリッドセダンの星瑞L。トヨタ車で言うところのカムリがピンポイントにその競合車として言えよう。
実際に試乗の際も先代型カムリのレンタカーを一緒に持ってきていたので、ハイブリットセダンの代表格としてカムリというクルマは中国内ではマイルストーンとなるモデルなのであろう。
まずはかぎられた時間のなかではあったが、車両の外観や内装を見ていくことにした。外観は近年のヨーロッパ特有の洗練されたデザインに近いものを感じた。ヘッドライトはシャープにして大きくせず、ボディのラインを乱さないようなバランスのいいフォルムだ。
印象としては色合いも含めてシックで大人の印象を受けた。光の当たり方で配色が少し変化するようなマジョーラカラーに似たような色が入っていて、今までのクルマでは見たことのないような新鮮な感じだ。
エンジンの内部やトランクも細部まで見渡していると制御やフィードバックするセンサー類やECUなどはワールドスタンダードな大手メーカー製のものを使用しているところも気づくことができる。
これはかなり本気で作り上げてきているクルマだとセンサーひとつとっても感じることができた。個人的にはマシンの外見はちょっと高級車な様相があり、いいのではないだろうか。
次にインテリアは白を基調としており、光が差し込むと明るく清潔感がある印象を受けた。ダッシュボードのステッチも分厚くしっかりとしており、シートもしっかりと作られている。最後に車両の値段を聞いてみると、中国国内の価格で14万8700中国元(約320万円)でこのクルマが購入できると聞いて驚かされた。
日本基準でこの装備、このスペックで考えると間違いなく400万円は下らない。中国でさらに値引きを入れると250万円くらいで買えるとも言っていたが、悔しいので聞かなかったことにしようと思う。しかし、価格だけでこれほど大きな差を見せつけられてしまい、天晴れだ。
■1.5Lターボハイブリッドの強力なトルクで車重を感じさせない
最後にいよいよ本命のインプレッションに移ろう。
榛名山のワインディングは中速がメインの綺麗な道だ。今回のGEELYの特徴は乗り出してすぐに理解することができた。ハイブリッドが故に電動モーターがアクセルを踏むと同時に力強くサポートしてくれる。
直4、1.5Lターボエンジンとは思えないほどの太いトルクに驚かされながら、1600kg近い車重を感じさせないような乗り味は運転していてストレスを感じさせない。
実際に登り勾配がきつい榛名山の登りですらスイスイと登っていくのは気持ちがよかった。
唯一気になったのが運転席シートのランバーサポートの薄さだった。
峠のような道ではブレーキやハンドリングは普段より少しきつめの入力になってしまう。左右に揺れる身体をしっかりとホールドするのはシートのサポートであり、これが今回の峠では高さが若干足りなかった。
ハンドリングやパワーバランスが総じてよかったがために、少しもったいない。サスペンションの味付けはとても柔らかく、ロールしながら旋回するのは筆者好みであったのは間違いなかった。
しかし、中国国内での価格は魅力的。日本でもし売ったとしたら間違いなく競合他車になりうるGEELYだが、今後の販売マーケット拡大に期待したいところだ。
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