「2024年問題」の核心である時間外労働960時間をめぐる状況は、依然厳しいものがある。
全日本トラック協会は2018年3月に「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン」(以下、アクションプラン)を策定し、2024年度にはドライバーの時間外労働時間が年960時間超となるトラック運送事業者の割合をゼロ%とする目標を掲げている。
このため、この目標の確実な実現に向けて、トラック運送事業者の働き方改革の進捗をモニタリングしているが、このほど第6回の調査結果を公表した。
調査は昨年10月時点の状況に準拠しているため、その後改善が大幅に進んだ可能性はあるものの、1/4超のドライバーが時間外労働の上限超えという結果は、やはりまだまだ前途は厳しいと言わざるを得ない。
文・写真/トラックマガジン「フルロード」編集部、図/全日本トラック協会
全ト協の働き方改革モニタリング調査
毎年調査を行なっている働き方改革モニタリング調査は今回で6日目。今年1月に調査を実施しているが、2023年10月時点の状況について回答してもらった。
調査対象は1154事業者(前回調査と同じ事業者)で、集計対象数は636事業者(集計率55.1%、2024年3月4日までの回収分を対象とした)である。
ちなみに調査方法別回収数は郵送回答356(56.0%)、Web回答280(44.0%)となっている。回答事業者の保有車両規模は、20両以下が31.0%、21両~100両以下が51.1%、101両以上が17.9%となっている。
では、時間外労働時間の上限を超える従業員の有無はどうか?
まず時間外労働時間(法定休日労働を含まない)が年960時間を超えるドライバーがいるかを尋ねたところ、「いる」の割合は25.9%で前回調査よりも低下した(前回調査29.1%)。1年前に比べて3.2%の低下だが、上限超えゼロにはほど遠く、2024年4月以降もこの結果を引きずっている可能性が高い。
また、ドライバー以外の一般労働者に、時間外労働時間(法定休日労働を含まない)が年720時間を超える一般労働者がいるかを尋ねたところ、「いる」の割合は10.7%で前回調査よりも僅かに少なくなった(前回調査11.4%)。
ドライバーの賃金や年休の状況は?
では、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の状況はどうか?
月60時間超の時間外労働に対する時間外割増賃金率引き上げ(25%→50%、中小企業でも2023年4月から適用)について対応しているかを尋ねたところ、「60時間超の残業に割増賃金率50%を適用している」は64.8%だった。内訳は「大企業であり元から適用」が3.0%、「中小企業だが以前から適用」が7.5%、「2023年4月から適用開始した」が54.2%であった。
これらに「月60時間超の時間外労働が発生する労働者はいない(25.2%)を加えると約9割が対応できている状態にあるが、「まだ適用していない」も7.5%存在する。
さらにドライバーの最近の賃上げ状況を尋ねたところ、「賃上げを行った」が69.3%だった。また平均の賃上げ率は4.4%であった。
ドライバーの年休の取得の状況はどうだろう?
年次有給休暇付与日数が10日以上となるドライバーについて、年休を5日以上取得させているかを尋ねたところ、「年休取得日数が5日に満たない労働者はいない」が84.4%だった。「年休取得日数が5日に満たない労働者がいる」は14.3%であった。
同様にドライバー以外の一般労働者では「年休取得日数が5日に満たない労働者はいない」は85.7%だった。「年休取得日数が5日に満たない労働者がいる」は10.1%であった。
標準的な運賃の届出・適用状況
適正な運賃収受は、ドライバーの待遇改善に影響する。
標準的な運賃の届出を行なったかどうかを尋ねたところ、「すでに届出を行なった」は88.2%、「届出準備中」は6.1%、「届出の予定はない」は4.6%であった。
そこで標準的な運賃を「すでに届出を行なった」とする回答者(561件)に、これを荷主に適用しているかどうか尋ねたところ、「標準的な運賃を適用している荷主がある」は22.3%、「適用した事例はないが、荷主と交渉中」は53.5%であった。
反対に「まだ荷主と交渉していない」は16.0%で、前回調査から減っている(前回23.6%)。
「2024年問題」を背景に荷主と運賃交渉をする事業者は確実に増えているが、まだ実を結んでいない状況も多く見られ、この分野では行政の一層の「指導力」の発揮が求められている。
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