日野ポンチョEVの開発と発表予定が頓挫してから約2年が経過。住宅街を巡るコミュニティバスは地域に根ざした公共交通機関のひとつとして小型ノンステップバスが普及している。そんな中、BMWのパワートレーンを載せたトルコ・カルサン社のEV「e-JEST」がデビューした。

(記事の内容は、2024年1月現在のものです)
執筆/近田 茂、写真/バスマガジン編集部
※2024年1月発売《バスマガジンvol.123》より

■輸入車の攻勢が始まるEVコミュニティバス

東京タワー近くのコースを快調に走る『e-JEST』。バスとしてはかなり小柄だが、堂々とした走りには貫禄すら感じる。挙動は機敏で出足も超スムーズだった

 ポンチョ(ディーゼルエンジン車)は「ユニバーサルデザイン」を採用。車椅子利用も含めて乗降性に優れ小回りの効く機動性の高さが人気のバスだ。

 この様なニーズを考慮し、1日の走行距離や運行管理面、また走行騒音の静かさ。そしてゼロエミッション車を活用する運送事業社のイメージアップへの貢献度など、EV化へのメリットは見逃せないものがあるわけだ。

 そんな市場のニーズをターゲットとし、この手の小型バスに輸入EV車の導入気運が高まっている。

 今回、日本総代理店となったアルテック株式会社が発表した新規モデルはKARSAN製e-JEST。日本では馴染みのないトルコのブランドだが、それだけに外観デザインを始め、全体に漂う雰囲気には新鮮味がある。

 ちなみに1966年に創設されたKARSAN社は、当初OEMの部品製造サプライヤーとしてスタートし、1980年代にはプジョーと共同でミニバンを製造。2006年には初の自社製バスを製造し、ルノー、シトロエン、ヒョンデとの提携も確立している。

 2013年には大中小の自社製バスを開発。その後電気バスやレベル4の自動運転バスを実用化し欧米を始めグローバルでの事業展開や販路拡大ぶりが注目されている。

斜め後ろからの姿は、バスなのでもちろん扉はなくスッキリ。キックアップラインのサイドウインドーがシャープな印象だ。バッテリーは後方床下に格納

 今回トルコ大使館で発表されたモデルは、ポンチョのショートボディよりコンパクト。車幅はほぼ共通だが、全長と全高は約30cm。そして軸距は38cmほど短く、乗車定員は23名(ドライバー含む)となっている。

 低いフロアデザインが構築された車体には全輪独立懸架サスペンションを採用。パワーユニットには、BMW社製135kWの最高出力と290Nmのトルクを誇る電動モーターを使用し前輪を駆動するFF方式が採用されている。

 88kWのリチウムイオンバッテリーは車体後部の床下に設置。航続距離は210km。最高速は70km/hに設定。果たしてどの様な乗り味を発揮するのか試乗が楽しみな存在だ。

 国産バスメーカーは2社あるが、海外からの攻勢を機に国産EVバスの開発気運に拍車が掛かればなお嬉しい。その意味でもe-JESTは歓迎したい。

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