少し前に休業中だった中古車販売店「ビッグモーター」から、中古車が盗み出されたという。セキュリティにまで手が回らないほどゴタゴタしているのかもしれないが、なぜ新車ではなく中古車が狙われるのか? 

※本稿は2024年5月のものです
文:国沢光宏/写真:AdobeStock(トップ画像=torwaiphoto@AdobeStock)
初出:『ベストカー』2024年6月10日号

■中古車がなぜ盗難被害にあうのか?

多くの自動車ディーラーでは夜間や休日の盗難被害を未然に防ぐための手だてを講じている(Vadim@AdobeStock)

 クルマ通の多い読者諸兄ならご存知のとおり、自動車ディーラーの道路に面する出入り口は夜間や休日になると一番安いクルマで塞いである。言うまでもなく盗難防止策です。

 あまり認識されていないけれど、それだけ自動車の盗難が多いということにほかならない。先日、休業中だったビッグモーターで複数のクルマが盗まれた。一連のごたごたで警備体制に問題があったんだと思う。

 なぜ中古車が盗まれるのか? 超簡単。新車を盗んでも意味ないし、出たばかりの新型車だと盗みにくいからだ。説明しよう。

 当たり前ながら盗んだクルマは換金しなければならない。盗難車の場合、日本や欧米など厳格なチェックを行う西側諸国で登録することなど不可能。かといって新興国に持って行くにしても、新車だと足が付きやすい。何で新車があるのかってことです。

■狙われるのは30系プリウス?

30系プリウスは使われている部品に価値がある

 また、バラして部品として販売するケースでも、新車はニーズ少ない。プリウスだって2世代前の30系あたりなら世界中から「部品が欲しい」と引き合いあるものの、現行プリウスだとなし。

 実際、30系プリウスは走行用電池からヘッドライト、ドア、バンパーなど、バラして売ったほうが儲かるんじゃないかと言うほどだという。お客のいないトコロじゃビジネスなんかできません。

 そして新型車は盗みにくい。キーのないクルマを盗もうとするとCANインベーダーやスペアキーの作成機を使わなくちゃならない。当然ながらCANを解析する必要あります。これ、簡単じゃない。

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■新型車が盗まれにくい理由

盗難車ランキングで常に上位に入るランドクルーザー

 レース関係者からロムチューンするべくCANの解析をしたら3000万円掛かったと聞いた。それくらい最新型のCANは複雑になっている。窃盗団にとって手強いセキュリティだ。

 ランクルについていえば、200までは解析できていると言われる。実際、CANインベーダーやスペアキー作成機で盗まれたと思われる盗難事案が少なくない。

 けれど300についていえば、私はキーなしで盗まれたという情報を持っていない。300じゃないものの、リレーアタックに対する防止機能もあるというウワサを聞いた。置いてあるスマートキーからは電波を出さないらしい。

 盗難防止策はあるのか? ハンドルロックを推奨しているメディアなど見かけるが、あんなの大きいカッターでハンドルを切ればいいだけ。車輪のロックも安価なタイプだと簡単に開けられてしまう。

 一番効果的なのは、ディーラーなどでやっている物理的な堤防を作ること。クルマの前に動かすと大きな音がする“もの”を置いておくことを推奨しておく。

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