先日開催されたレースイベント「テイスト・オブ・ツクバ」が盛況に終わったことは記憶に新しい。熱いレースが行われる傍ら、多くのメーカーなどがブースを出展していたが、中でも目を引いたのは「井上ボーリング」が開発中である水素仕様の「RG125Γ(ガンマ)」ではないだろうか。さっそく詳細を確認していこう。

  文/Webikeプラス  

“1次圧縮”が必要ない水素2ストガンマを展示!

 

 

 

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 近年耳にする機会も増えた“水素エンジン”というワードは皆様もご存じだろう。「カワサキ」「スズキ」「ホンダ」「ヤマハ」の4メーカーも参加する水素小型モビリティ・エンジン研究組合「HySE(ハイス)」が発足されたのは去年の話だ。

 水素仕様のガンマを展示していた井上ボーリングは、実はHySEが設立するずっと前、2007年から水素エンジンの開発に取り組んでいたというのだから驚き。しかも2ストロークエンジンを使った水素バイクをすでに制作しており、去年のテイスト・オブ・ツクバでもTY250スコティッシュをベースとした第1号「水素バイク」を出展。11月の同イベントでは実際に走行デモンストレーションを行うなど、そのポテンシャルの高さと水素エンジンの可能性を提示した。

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 水素を圧入したボンベが剥き出しだった武骨な第1号とは打って変わり、今回展示されていた“試作2号機”の水素ガンマはガソリンタンクが装着された状態。誤解を恐れずに言えば、しっかりと“オートバイ”の外見に仕立て上げられている。

 注目なのは外見だけではなく、その機構。同車では電動スーパーチャージャーを用いることで、2ストでは必須であるはずの“1次圧縮”をせずに走行を可能にさせる予定だという。まずはガソリンでの試験運用から始めるそうだが、“混合気をクランクケース内にいっさい入れない”という機構の2ストは他に類を見ない。

 この試作2号機を制作するにあたり、同社では期間限定でクラウドファンディングを実施。現在は225名の支援者たちから280万円以上の支援金が集まっており、これを元に試作2号機の開発を進めていく。

 

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進むカーボンニュートラルと井上ボーリングの願い

 

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 「エコの時代だからと言って、今あるオートバイから乗り換えてしまうのはせつない。名車への愛とエコの精神は同居できるはずだと我々は考えました」

 EVモビリティや水素エンジンの推進といった“脱炭素”を図る二輪業界。こうした現状を受け、井上ボーリング代表の井上壮太郎氏は複雑な胸中を語る。

 「エンジンで世界を笑顔に!」をスローガンに掲げる同社は、マッハや空冷Zシリーズなどに対応するメッキスリーブを製造・販売する内燃機関のスペシャリスト。それゆえに内燃機関への想いは強く、世界がカーボンニュートラルの推進を掲げる以前より、2ストの水素エンジン化に向けて邁進してきた。

 注目するべきは、同社は“2スト”の水素エンジン化に特化して注力しているという点だ。排ガス規制などの兼ね合いもあり、街中でも見かける機会が少なくなった2ストだが、未だに根強いファンも多い。

 数多くの名車が軒を連ねている通り、それだけの“魅力”を持つエンジンとも言える。井上社長は、そんな愛すべき2ストを世の中から消したくないという。

 「今あるオートバイ、愛車、名車に少しだけ手を加えて“エコバイク”へと生まれ変わらせ、本当に水素で走って見せる。水素バイクでエンジンを残すことにチャレンジします!!」

 2ストの延命のために20年もの歳月を捧げてきた井上ボーリング。水素ガンマには、内燃機関の明るい未来へ賭ける想いが込められているのだ。井上ボーリングの水素2ストエンジンから今後も目が離せない。

 

詳細はこちらのリンクよりご覧ください。
https://news.webike.net/motorcycle/375929/

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