「キンキン」「コンコン」という音がエンジンから聞こえた場合、それは「ノッキング」という症状の兆候かもしれません。ノッキングは放置しておくとエンジンに重大な損傷を与える可能性も….. ではこのノッキングを起こさないために、今一度対処法や予防法を確認しておきましょう。

文/佐々木 亘 写真/AdobeStock(トップ写真=Brian@AdobeStock)

■タイミングのズレた点火がノッキングの原因

ノッキングとは、エンジン内部で燃料が不均一に燃焼し、正常な燃焼サイクルとは異なるタイミングで燃料が爆発する現象を指す。放置するとエンジンに大きなダメージを与える可能性も(PT@AdobeStock)

 クルマに乗っている時、明らかに不自然な振動を感じることがありませんか。

 振動は数秒で止まることもあり、なかなか気に留めずに走り続けている方も大勢いるのですが、それがもしかすると、エンジンに大きなダメージを与える予兆の可能性もあるのです。

 ノッキングは、エンジン内部で燃料が不均一に燃焼し、正常な燃焼サイクルからタイミングがズレて燃料が爆発する現象を指します。

 燃焼タイミングが早いものを「プレイグニッション」、正常燃焼の後に別の火種によって発火するものを「デトネーション」といい、どちらもエンジンに対して悪さをするものです。

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■ノッキングはなぜ起きるのか?

 ノッキングが起こる原因にはいくつかあります。

 まずプレイグニッションは、エンジンの点火プラグによる点火前に、燃料混合気が自己発火してしまう現象です。

 この自己発火は、エンジン内部の高温の部品(ピストン、シリンダー壁、デポジットなど)により発生します。

 その原因となるのは、過度のエンジン加熱や不適切な燃料使用、高圧縮比、エンジン内部の炭素堆積などです。

 一方デトネーションは、高圧縮比、高ブーストのクルマに多く、仕様よりもオクタン価の低いガソリンを入れた際にも起こる可能性があります。

 簡単にいうと、ハイオク仕様のクルマに、オクタン価の低いレギュラーガソリンを入れると起きやすくなる現象です。

 ノッキングは、現代の高性能なエンジンでも起こりえる問題です。高性能なエンジンだからこそ、起きやすくなっているとも言えるのではないでしょうか。

 低燃費で高効率なエンジンが最近の主流ですが、なかには高圧縮比やターボチャージャーなどを使用して効率を高めているものもあり、これらの技術は誤った使い方をすると、ノッキングを起こしやすくする要因にもなるのです。

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■女性や高齢者ドライバーのクルマにはノッキングが多い?

筆者の過去の経験では、ノッキングに起因する車の異常を訴えてくるのは女性や高齢者に多いという(miya227@AdobeStock)

 筆者の過去の経験から見ると、ノッキングを起因とする車の異常を訴えてくるユーザーは、女性や高齢者に多いです。

 この2者に集中する理由はいくつか考えられますが、まず燃料に対する認識の不足が、不調を招くきっかけになっているのでしょう。

「前のクルマもレギュラーガソリンだったから」「安いレギュラーの方でいいか」と言う習慣化した考えが、誤った燃料選択につながっています。

 また、女性や高齢者ドライバーは、運転に慎重で送迎や買い物といった短距離運転だけの方も多いです。クルマにストレスがかかる状態を続けることで、状態の悪化が進んでいくことも多くあります。

 最後に、ノッキングの一因となる大きな理由として挙げられるのが、クルマのメンテナンスに関する認識不足です。

 クルマの構造や性質などについて、苦手意識を持つ人は多く、メンテナンスせずに乗り続けている人も少なくありません。

 定期的なメンテナンスもせず、ガソリンを入れれば走行するという思い込みはノッキングの原因だけでなく、車の寿命を縮めてしまいます。

 もし、ノッキングのような症状が出たら、高オクタン数の燃料に切り替える、急激なアクセル操作を避け、エンジンに過剰な負荷をかけないようにするようにしましょう。

 それでも、ノッキングが頻繁に発生する場合は、早めに専門業者へ相談し、修理や調整を行うことをおすすめします。

 予兆を感じ取れれば、大きな問題に発展することは少ないノッキング。早期発見、早期治療が大切です。

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