YAMAHA Trail 250 DT1 1969

近所のバイク仲間が長年所有(20数年)していた部品取り車のDT1。お話しを聞くと、このバイクをレストアするつもりでコツコツと部品集めもしていたそう。おおよそ90%以上の部品は純正新品部品と中古部品を含めてストックしているそう。そんなベース車両からのフルレストアを、縁あって担当させていただくことになった。ここでは「旧車レストア×ヤマハDT1」のタイトルで、フルレストアレポート開始!!

  文/たぐちかつみ Webikeプラス  

欠品部品の状況確認で仕上げ作業時間を想定できる







 ガレージへ運んでくる直前に撮影した1枚の写真。極上車から超ボロボロ車まで、過去には何度もフルレストア経験があったが、正直、このDT1の程度は素晴らしく良く感じた。もちろんキックはスムーズに降り、その際に気になる異音も無い。そんな印象を持ったぼくは、ちょっとヘン?バイクの大先輩、パウダーコーティング・カトー代表の加藤さんからは、ヤマハDT1の素晴らしさを聴かされてきました。新品ピストンとピストンリングを準備して、アルミメッキスリーブ+吸排気ポートに「柱」を追加した柱付きのアルミメッキシリンダー=井上ボーリングのICBM®シリンダーにもチャレンジしたい。排気量数字がない鉄棒溶接+クロームメッキ仕上げのマフラープロテクターが、初期型DT1シリーズの特徴でもある。1968年モデルは、排気出口のパイプが絞られたデザインとなっているようだ。このベース車は、おそらく初代オーナーさんが新車購入した当初から、保安部品を取り外してモトクロッサーとして走らせていたような雰囲気だった。

     

表皮のコンディションも大切だが鉄板ベースは!? 



 程度が良さそうな純正シートでも、ベースの鉄板がサビサビだったり、張りかえシートながら、ベース鉄板がボロボロなどなど、様々なコンディションの旧車シート。シートはいくつかあるそうなので、ニコイチ、サンコイチで、イイ感じのフィーリングに仕上げたいと思いますが、果たして。

ピストンバルブによる吸気システム 



 茶色い強化ブラスチック=ベーククライト製インシュレーターにキャブレターをダイレクトにマウントするDT1初期型。アルミ製マニホールドを採用しなかったのは、エンジン熱をキャブレターへ伝えない「遮熱」が目的だったのだろう。1969年型は完全量産型キャブレターを装備するが、それでもメインジェットの交換は、フロートチャンバーを外さず外側から交換できる特徴的なメカニズムを採用。型式DT1Fとなる1971年モデルからは、シリンダーとキャブの間にリードバルブが装着される。

細部にも特徴が多いDT1シリーズ





 1969年型なので鉄製ドロ除けのフロントフェンダーを採用している。1968年型のフロントおよびリアフェンダーのドロ除け本体は、軽量なアルミ製だったが、取り付け部分のダンパーゴムがへたるとアルミフェンダーへは容赦なく亀裂が走った。このフェンダーステーにも特徴があり、69年型以前は完全な丸パイプ成型部品なのに対し、その後は、半丸のようなプレス成型部品へと変更されている。

POINT  

 

  • フルレストア前のポイント・作業開始前にはベース車両のコンディションや欠品部品の有無、欠品部品の入手可否状況を調べよう。状況によってはベース車両の変更も視野に入れて事前段取りを進めることもある。あわててはいけない!! 

 旧車の「2ストトレールモデルを楽しみたい!!」と考えたときに、真っ先に思い浮かぶモデルの1台が「ヤマハDT1だ!!」と語る熱烈なファンは数多い。1967年秋のモーターショーで発表され、1968年から発売されたヤマハDT1は、スクランブラーの延長上にあった、当時のオフロードバイク概念を大きく変えたモデルだった。スクランブラーから脱皮し、純粋な「モトクロス」を目指したニューモデルであり、今も昔もモトクロス大国のアメリカでは、爆発的なセールスを記録したモデルでもある。

その歴史を振り返ると1688年初頭には北米向け輸出仕様車が出荷され、春先には日本国内でも発売開始。アメリカ仕様も国内仕様も、発売当時はウインカーを装備しない仕様で、アメリカ向けはシングルシート仕様で、国内向けはタンデムを想定した2名乗車仕様だった。そのため国内仕様のシートレールには、左右をつなぐブレースが付くるアメリカ仕様に対してシートレールが強度アップされていた。その後、68年秋には69年型の生産が始まり、通称たまご型の丸型大型ウインカーを標準装備する仕様へとなった。

 発売当初はゴールドメタリック(国内カタログカラー)とパールホワイトの2色で、前後シルバーのフェンダーと黒色オイルタンクのバランス感を含め、軽快性が高いカラーリングに憧れたライダーも数多かった。細かな部分に触れると、同じ1968年式でも、初期生産モデルと完全量産モデルとでは細部の仕様に違いが多く、そんな部分もファンに興味を与える旧車ならではのファクターだった。

 バイク仲間が部品取り車として長年所有してきたバイクをベース車両に、フルレストアを実践する今回。これまでに何台もの旧車フルレストアを経験してきたが、DT1は初体験。この時代のトレール車は、装着される部品点数が少なくて良い。このベース車を長年所有し続けてきたバイク仲間のお話しによれば「完成してみないとわからないけど、90%くらいの部品は揃っているかなぁ~」とのお話しなので、少しは楽観視。この先、どうなることやら。

 フルレストア担当 たぐちかつみ


過去に仕上げたフルレストア車

YAMAHA YA5 Deluxe 1962





1961年から市販開始されたヤマハ125YA5。部品交換会会場で購入した車両は1962年に生産されたデラックスのようだ。まずは当時のカタログやパンフレットを調達。スタンダードモデルは黒、濃紺のカラーリングで、クリアのアクリル製マスコット風防を装備しサドルシートが特徴だった。デラックスモデルは、ヤマハ250YDS1(登場時のモデル名250S)と同じ「ゴールドグルデン」カラーを採用。アンバーのマスコット風防と赤いダブルシートが特徴的だった。何度も色を塗り換えされている様子だが、紛れもなくベースモデルはヤマハ125YA5。ヤマハ初の「ロータリーディスクバルブ吸気」を採用したモデルで、ライバルはホンダのベンリースーパースポーツCB92(125cc)だった。



 欠品していたWシートは、シートフレームから自作製作。一から作ろうとは思ったが、ホンダの神社仏閣C92用Wシートをベースに形状を大きく変えて、ヤマハYA5デラックスのデザインへとレプリカした。エキスパンダークッションの乗り心地はフカフカ!!





 本気でフルレストアに取り組み完成までに約1年半。しかし、その後のセットアップに手間取ってしまった。トラブル原因は、ミクニ392型アマルキャブレターの取り付けフランジが歪んでしまい、僅かな二次空気を吸い込み、走る都度「ダキツキ症状」が発生してしまった。最終的には、純正インシュレータープレートと同形状で裏表にOリングが入る部品をアルミ削り出しで製作。以来、何事も無く、気持ち良く走ってくれている。現代のバイクと最大の違いは「混合燃料」仕様。ガソリンに2ストオイルを混合しないと簡単に焼き付いてしまう。同じ2ストロークエンジンでも、オイルポンプが無い時代は、最初からガソリンにオイルを混ぜてタンクへ入れる「混合ガソリンエンジン」仕様なのだ。

➤次回へ続く。

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https://news.webike.net/maintenance/379432/

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