ホンダの個性派ミニバンと言えばジェイドだ。元々は6人乗り登場だったのに加えて、途中で5人乗りのステーションワゴン風仕様が追加された異色の経歴を持っていた。でも一体なんでこんな数奇な運命を辿ったのか? 紹介していこう。

文:西川昇吾/写真:ホンダ

■元々は中国で売られていた

そのパッケージングからしても、日本市場ではストリームの後継モデルと言える存在だった

 2015年2月に日本市場での販売を開始したジェイド。元々は中国市場で販売されていたモデルであった。その起源となるコンセプトモデルや2012年の北京モーターショーで披露されたConcept Sであった。

 伸びやかなデザインは2×3列の6人乗りでありながら、全高1540mmと低く抑えられていて日本の機械式立体駐車場にも対応してくれる高さであった。そのパッケージングからしても、日本市場ではストリームの後継モデルと言える存在だった。

 3列シート車であったが、低い全高とヒンジドアということもあり、実質的には2列目までがメインで使用するシートであり、3列目はややエマージェンシー的な要素が強かった。

 2列目の独立したキャプテンシートはリアのホイールハウスを避けるために、シートレールを後方内側に斜めにレイアウトして、大きなスライド量を確保。足を広々と延ばすことも可能としたのだ。

 ただ、3列目の頭上をグラスルーフにして開放感を演出するなど、厳しい制約の中でも3列目の快適性を上げる工夫も施されていた。

 ホンダらしく室内空間を広く確保するために、駆動用バッテリーはセンターコンソールに、燃料タンクは2列目シート下に配置するM・M思想が現れたレイアウトも光っていた。

■走りは流石のホンダだ

 中国市場ではガソリンエンジンモデルが先行投入されていたが、日本市場では市場の傾向に合わせてハイブリッドを用意した。この点が日本市場での展開が遅くなった理由でもあった。131PSの1.5Lエンジンと29.5PSのモーターが組み合わされており、7速DCTを介して駆動力が路面に伝えられる。

 ヴェゼルと同じプラットホームを採用しながら、リアサスペンションには低床実現のために当時新開発のダブルウィッシュボーンが採用されていた。低いフロアとこのリアサスペンションは走りの良さにも繋がっていて、3列シートを有しているにもかかわらず、運転の気持ちいいモデルであった。

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■起死回生のRSを投入したジェイド

2018年5月に行われた改良で、走りのグレード「RS」も追加された

 良い走りと日本でも扱いやすいボディサイズでありながら3列シート、そんな魅力を持って日本市場で販売されたジェイドであったが、日本市場での販売は上手くは行っていなかった。

 当時は3列シートを有するミニバンのトレンドが転換期を迎えている時期でもあった。3列目へのアクセスが容易で室内空間が広いスライドドアミニバンが、3列シート車の基準となりつつある時期であったのだ。

 この市場の変化をくみ取ったのだろうという改良が2018年5月に行われた。3列シートを撤廃した5人乗り仕様が投入されたのだ。低い全高という特徴を生かして、ミニバンというよりはステーションワゴン的な戦略を取ったのだ。

 そしてこのタイミングで走りのグレード「RS」も追加された。ファミリーカーから方向転換し、より走りの楽しいスポーツワゴン的なマーケティング戦略を取った。

 ただ、時代の流れには逆らえなかった。SUVがトレンドとなった日本市場ではステーションワゴンはヒットという訳にもいかず、走りの良さという面では、先に登場しているステーションワゴンとして最初から開発されたモデルたちに太刀打ちするにはやや力不足な面もあったと言えるだろう。

 この手のヒンジドアミニバンは市場から無くなってしまったことを考えると、時間の問題でもあったのかもしれない。ジェイドはクルマのトレンドの移り変わりを感じさせるモデルでもあった。

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