トラックの架装には隠れたヒット商品が存在します。今回ご紹介する「リンボーバン」も、40年前に誕生したロングセラーで、未だに街中でよく見かけます。
ぱっと見、普通のバンボディとあまり変わらないから気づかないかもしれませんが、このクルマ、実はスゴいんです!
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/北村製作所
荷物室の高さが変えられるアイデア車両
「リンボーバン」は新潟にある架装メーカー・北村製作所の製品だ。1984年に初めて製作され、それから2~5年かけて初期型を改良し、ほぼ現在の形になったという。
その最大の特徴は荷物室の高さが変えられること。積載する荷物の量や周囲の環境に合わせて、ボタン1つで車高の調節が可能になっている。
車高を下げれば車高制限のある地下駐車場などにも入場できるし、車高を高く調節すればで背の高い大型家具、生活器具等の積み降ろしが直立作業で行なえるというアイデア車両だ。
北村製作所があげている製品特長は、1. 車高調節により収納スペースの調整が可能。荷物が多い時は車高を高くし収納空間を多く取れる。2. 車高を低くすることで、車体の空気抵抗が減り車体が安定。安定走行と燃費軽減に効果を発揮する……というもの。
リンボーバンの構造と機能
では、「リンボーバン」の構造はどのようになっているのだろうか?
「リンボーバン」は見た目は通常のアルミのドライバンとよく似ているが、上箱が下箱にかぶさった形状になっており、上箱はワイヤーで支えられている。
荷箱の四隅には昇降ポストが設けられ、昇降シリンダによってガイドローラーを介してワイヤーで上箱を上下させる仕組みになっている。昇降シリンダは車載バッテリーによるモーター駆動だ。
操作する際は、運転席に設けられたリンボー電源を入れて、車両の左サイド後部に設けられたコード式車高調整リモコンで、任意の高さに荷箱を調整する。このリモコンはコード式のため、ケースから取り出して高さ調整することも可能だ。
そのほかの構造的な特徴としては、昇降ポストはガタのない機構を採用。さらにリヤには荷箱を任意の高さにしても気密性を守る後部シャッタードアを採用している。また、リフト付きの「リンボーバン」も選ぶことができる。
「リンボーバン」の諸元は、10尺ボディの標準キャブの庫内寸法の場合、長さ2860mm×幅1605mm×高さ1160~1885mmで、上下の昇降ストロークは725mm。また、14尺ボディの標準キャブ(ワイドキャブ)の場合は、長さ4150mm×幅1640mm(1915mm)×高さ1160~1955mmで、ストロークは795mmとなっている。
「リンボーバン」の2003年~2024年の累計販売台数は約1300台で、現在は年販約50台だという。
北村製作所によると、「ボディが上下する小型トラックはほぼ全て当社製のリンボーバンだと思います。台数的にも(それほどボリュームがないため)他社さんが製作するメリットが少なく、敢えて作ろうとしないようですね」。
とはいえ、日本通運や西濃運輸など大手ユーザーでも使用されており、集配ルートなどの都合上、どうしても「リンボーバン」でなければ、といったニーズが確実に存在するようだ。ロングセラーの秘密はそんなところにあるのかもしれない。
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