2024年7月20日、カワサキが鈴鹿サーキットで「水素エンジン研究車」を一般初公開した。12月に事業説明会で公開され、2024年からテスト走行することを明らかにしていたが、鈴鹿8耐の観客の前で水素エンジンの排気音を響かせたのだ。

  文/市本行平 Webikeプラス  

カワサキ担当役員は「2030年代初頭に発売したい」と発言

 今回鈴鹿8耐で初走行した「水素エンジン研究車」は、2023年12月に開催された川崎重工グループビジョン進捗報告会で初公開されたもの。その際カワサキモータースの伊藤社長は、「年明けには試験走行を開始し、研究を行っていきます」と語っていた。

 これがバイクファンを前に初走行。通常のガソリン車と変わらぬ排気音を響かせながら鈴鹿サーキット東コースを1周した。カワサキの水素プロジェクトを担当する松田義基氏は「2030年代初頭に皆様へお届けしたい」とし、発売に向けた強い意志を示している。

 実際、水素エンジン研究車のエンジンは2024年のダカールラリー参戦車にも搭載され完走しており、研究開発は順調と言えるもの。H2 SX用のスーパーチャージド1000ccユニットを水素仕様にしており、車名は「H2H2にでもしましょうか?」(市氏)という内容なのだ。

 H2H2とは、H2(=水素分子)仕様のH2(=ベース車の名称)のことで、車体も含めてH2 SXをベースにしている。これにトヨタMIRAIの水素タンクを2基搭載し、水素カローラのインジェクターを採用。現状の航続時間は実用走行で1時間ほどに仕上がっているという。

 

 

 

 

 

 

     

スーパーチャージャーは水素燃料でも強み

 カワサキが「H2H2」で研究に取り組む理由は、H2独自のメカニズムであるスーパーチャージャー(SC)が、水素燃料に向いていると考えているからだ。水素は燃焼が早く、通常のエンジンでそのまま使うと異常燃焼が問題になるが、SCが課題解決の鍵になるという。

 水素エンジン研究車ではSCでシリンダーに空気を圧送し、水素燃料をシリンダーに直噴している。噴射からの着火が早いことからガソリンエンジンよりレスポンスが高まるため「水素はモーターサイクル向き」(市氏)と、デメリットをメリットにしている。

 また、水素は燃焼温度が高くなると窒素酸化物(NOx)が発生してしまうが、理論空燃比の半分では発生しない。燃料を薄くし排気を無公害にしながらハイパワーを追求するには、SCで空気をたくさん送り込むことが解決策になり、「Fun to Ride」(松田氏)につながるのだ。

 もちろん課題もあり、片側25Lの水素タンクを2基設置しても航続距離はガソリンに及ばず、水素ステーションのインフラも未整備だ。現在、メーカー合同の水素小型モビリティ・エンジン技術研究組合「HySE」がこれらの課題に5年計画で取り組んでいる。

 実は10年前に発売前のH2Rが鈴鹿8耐でデモ走行しており、今回の「H2H2」の走行は時代の変化を感じさせる出来事でもあった。もしかしたら10年後の2034年には水素バイクが8耐に参戦しているかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 

 

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