世界最大の自動車市場の中国に進出している日系企業の進退を含めた今後の投資動向にも大きな影響を及ばす決断とみられる。
日本製鉄が、中国の鉄鋼大手・宝山鋼鉄との合弁事業を解消すると発表した。中国の自動車市場では電気自動車(EV)が台頭し、供給先の日本の自動車のメーカーが競争激化によって現地販売が苦戦しており、この先も「成長が見込めない」と判断。解消によって中国の鋼材生産能力を7割削減し、米国やインドに経営資源を集中させる狙いという。
きょうの日経が1面トップで「日鉄、中国宝山と合弁解消、現地の生産能力7割減、米印に経営資源集中」などと報じたほか、各紙も「日系車回復見込めず」(読売)、「自動車鋼向け鋼板、EV普及の影響」(朝日)などと、経済面に取り上げている。
日本製鉄と中国との関係は古く半世紀前にさかのぼる。日中国交正常化後の経済協力の目玉として1970年代に日鉄が高炉技術を供与し、中国初の近代製鉄所となる上海市の「宝山製鉄所」の建設に協力した。ベストセラー作家の山崎豊子さんの小説「大地の子」は、この建設事業がモデルとなったことでも知られている。
2004年には、中国が自動車の巨大市場に急成長したのを受け、日鉄と宝山鋼鉄は合弁会社の設立を決め、ルクセンブルクのアルセロール(現アルセロール・ミタル)を加えた3社で「宝鋼新日鉄自動車鋼板」(当時)を設立。日系自動車メーカーも相次ぎ中国市場に参入するなかで自動車のボディーに使う薄板鋼材の加工を担った。だが、合弁契約の期間は20年で、今年8月末に期限を迎えるのを前に、日鉄は合弁を解消する方針を固め、出資分を全て宝山鋼鉄に売却するという。
日鉄が半世紀に及ぶ宝山鋼鉄との協力関係に区切りをつける背景については「中国自動車産業の構造変化」のほかにも「蜜月関係が転機を迎えた一因が特許権侵害を巡る21年の訴訟」 (日経)と指摘。2021年には電動車のモーターなどに使われる無方向性電磁鋼板の特許を侵害したとして、宝山鋼鉄とトヨタ自動車、三井物産を東京地裁に提訴。「トヨタへの損害賠償請求は23年に放棄したが、宝山鋼鉄との訴訟は継続している」(毎日)とも伝えている。
2024年7月24日付
●米大統領選「ハリス対トランプ」構図固まる、民主の指名確実 (読売・1面)
●日本製鉄、中国・宝山と合弁解消、自動車鋼板,日系EV苦戦受け (読売・2面)
●トヨタ、自社株TOB取得(読売・9面)
●損保4社に報告命令、金融庁、代理店通じ情報漏えい (朝日・7面)
●生活道路「30キロ規制」26年9月から(朝日・32面)
●テスラEV販売シェア50%割れ、米、4~6月期 (毎日・6面)
●トヨタ、国内3工場を一時停止(日経・13面)
●三菱自、純利益39%減、4~6月、主力の東南アジア需要低迷(日経・16面)
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