欧米では「踊り場状態」といわれている電気自動車の普及率。しかし「踊り場」は上っていく階段と階段を繋ぐからこそのもの。日本での電気自動車普及率は踊り場までも行かない「一階ロビー」で停滞中。なぜ日本ではEVが普及しないのか?

※本稿は2024年6月のものです
文:国沢光宏/写真:日産、三菱、トヨタ、スバル、テスラ ほか
初出:『ベストカー』2024年7月26日号

■EV普及の最大の敵は「石油利権」か?

急速充電器増設が計画されてはいるが、日本の充電インフラ整備はほとんど進んでいない

 NEXCO3社(中日本と東日本、西日本)は2024年度、全国119カ所のSA・PAに250口規模の急速充電器の増設を進めるという。

 さらに2025年度は引き続き全国114カ所のSA・PAで190口規模の急速充電器の設置を進める予定だ。

 NEXCO中日本は150kW級の急速充電器を2025年度までに48カ所に設置すると発表しており、NEXCO3社は2025年度末までに急速充電器の総口数を1100口程度へ増設する予定らしい。

 こういった発表を見ると「頑張ってますね」的な気持ちになるけれど、冷静になって考えてみれば2023年度で660口の急速充電器が440口増え1100口になるだけ。

 2023年度で2.28%の販売シェアしかない電気自動車が2024年度も同じくらい売れただけで、時間帯によっては短くない充電待ちが発生している今と同じ状況になってしまう。

 いまだ200Vは5口しかない羽田空港を見てもわかるとおり、日本の充電インフラ整備はまったく進まない。

 予算面から見てもやる気のなさがわかる。2024年度のEV関連の補助金を調べると、充電設備への補助金は360億円、EV購入時の補助金は1291億円となる。

 これまた「けっこうな金額じゃない」と思うかもしれないが、消費者に全額還元されているのか大いに怪しいガソリン補助金は、2022年1月からの2年半で5兆円にも達している。

 もはや石油利権が電気自動車の普及にブレーキを掛けているとしか思えないです。

 実際、電気自動車の普及は石油利権にとって決定的にダメージを与える。

 そもそも原油を精製すると一定量が作れてしまうガソリンは、エンジン用として売れば大いに儲かる。ほかの原料用として使おうとすれば安く買いたたかれる。

 現在日本のガソリン価格は先進国G7でアメリカと並び一番安い。欧州だと300円/L。カナダが270円/L。アメリカは160円/Lながら、ガソリン諸税の違いを考えたら日本のほうが液体としての価格は安い。

 参考までに書いておくと、新興国だってガソリンは高い。最新の相場でタイが160円/L。フィリピンで170円/Lというイメージ。

 繰り返すけれど日本はガソリンが安い。ガソリン価格が上がってくれば電気自動車に乗り換えようというユーザーだって増えてくる。

 日本のガソリン価格はそいつにブレーキを掛けることになっています。欧州やアメリカは直近で踊り場状態になっているEV普及率ながら、2026年くらいから上向きになる予想。日本はどうするんでしょ?

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