ツーリングなど、バイクの移動中にスマートフォン(以下、スマホ)に入れたお気に入りの音楽を、イヤホンを使って聴いているライダーも多いでしょう。
運転中にスマホを使うこと自体は、たとえば、走行中に画面をじっと見たり、手で操作したりすると、いわゆる「ながら運転」に該当し、道路交通法違反に該当。最も重い場合で、「1年以下の懲役」というケースもあるほど、厳しい罰則が設けられています。
では、走行中にイヤホンを使ってスマホの音楽を聴くことは、この「ながら運転」に該当し、違反になるのでしょうか? 

文/平塚直樹 Webikeプラス

 

     

そもそも「ながら運転」はどんな違反?

 ながら運転は、「道路交通法第71条第5号の5」で規制されている行為です。同法の条文によれば、運転中にスマートフォンなどを手に持って通話したり、画面を注視したりすることは禁止。違反すると、以下のような重い罰則や反則金などが課せられます。

・携帯電話使用等(保持)

罰則:6か月以下の懲役または10万円以下の罰金
反則点数:3点
反則金:2輪車1万5000円 原付1万2000円
*運転中にスマホなど携帯電話を使用(保持して通話や画面注視した場合など)

・携帯電話使用等(交通の危険)

罰則:1年以下の懲役または30万円以下の罰金
反則点数:6点(免許停止)
反則金:適用なし
*運転中にスマホなど携帯電話を使用(保持して通話や画面注視した場合など)、さらに、交通事故を起こすなど交通の危険を生じさせた場合

 

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スマホの音楽をイヤホンで聴く行為は?

 では、バイクの運転中に、スマホと接続したイヤホンを耳に入れて音楽を聴くことは、この「ながら運転」に該当するのでしょうか? 

 これについては、クルマやバイクの運転者の安全義務を定めた「道路交通法第70条」が関連してきます。条文には

 「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」

 と明記されています。

 運転をするときは、ハンドルやブレーキなどを確実に操作し、「他人に危害を及ぼさない」ような速度と走行方法をすべきといった意味ですね。バイクの場合では、たとえば、ハンドルを片手で運転する行為なども、この「安全運転義務」に違反する可能性があります。

 でも、この条文には、イヤホンについての記述はありません。そのため、必ずしもイヤホンを使って運転していたからといって、道路交通法違反になるとは限らないといえます。

 ただし、例えば、イヤホンを耳に入れ、大音量で音楽を聴いていたことで、ほかのクルマや歩行者に気づかずに事故を起こした場合などは、「安全運転義務違反」とみなされる可能性もあるので注意したいところです。

 そして、もし安全運転義務違反で捕まると、最も軽いケースでも

・違反点数:2点
・反則金:2輪車7000円 原付6000円

 を課せられることになります。

 

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走行中のイヤホン使用が違反となる都道府県もある

 また、都道府県によっては、走行中にイヤホンを使用することについて、一定の制限を設けた条例を設けている地域もあります。

 例えば、東京都の場合、「東京都道路交通細則 第2章 第8条(5)」に以下の規定があります。

 「高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと」

 また、神奈川県でも、「神奈川県道路交通法施行細則 第3章 第11条(5)」で、以下のような規定を設けています。

 「大音量で、又はイヤホン若しくはヘッドホンを使用して音楽等を聴く等安全な運転に必要な音又は声が聞こえない状態で自動車、原動機付自転車又は自転車を運転しないこと」

 これら条例は、いずれも、カーステレオやイヤホンを使い大音量で音楽などを聴くことで、「安全運転に必要な交通関連の音や声が聞こえないような状態で走行すること」を禁止したものです。

 もし、捕まった場合、例えば、東京都(警視庁)のケースでは、「公安委員会遵守事項違反」となり

・反則金:2輪車6000円 原付5000円

 となります(反則点数の適用なし)。

 

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ヘルメットを被るバイクは特に注意したい!

 以上から考察すると、都道府県の条例などにもよりますが、イヤホンを使ってバイクを運転すること自体は即違反とはならないものの、大音量で音楽などを聴いていると捕まるケースもあるといえます。

 ただし、イヤホンは耳を塞いでしまうため、もし大音量にしなくても、周囲の音が聞き取りずらくなるのは確かです。また、ついつい音楽に夢中になることで、注意力が散漫になる場合も考えられます。

 よく、イヤホンを付けて自転車に乗っている人が、ブラインドの曲がり角から出てきた歩行者などに気づかず、衝突してしまうことと同じですね。筆者も、そんな自転車の運転者に、ただ歩いているだけなのにブツけられたことがあります。

 幸い筆者に怪我はなく、先方も転倒まではしませんでしたが、その自転車は何も言わずに去って行き(まるでひき逃げ)、ちょっと気分が悪くなったことを覚えています。

 しかも、バイクの場合は、ヘルメットを被るうえに、エンジン音や風切り音などもあるため、さらに交通に関する音などが聞こえにくくなりがちです。運転中に音楽を聴きたい場合は、細心の注意をすべきだと思います。

 

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音楽を聴きたいライダーにおすすめのアイテム

 どうしても、バイクの運転中にスマホの音楽などを聴きたい場合は、例えば、骨伝導タイプのイヤホンを使う手もあるでしょう。このタイプなら、耳を塞がないため、一般的なイヤホンよりも、周囲の音は聞こえやすくなります。ただし、製品の形状などによっては、ヘルメット内にセットするのが難しいケースもありますね。

 

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 ほかにも、ブルーツゥースなどでスマホと接続できるバイク用のインカムなどを使う手もあります。特に、本体ユニットをヘルメットの外側に装着するタイプであれば、耳を塞ぎませんし、ヘルメットを被るときも楽です。

 もちろん、こうした製品を使う場合でも、大音量はNG。法律で違反となるか否かの前に、あくまで私見ですが、かなり危険な走行だと思います。2輪で走るバイクは、不安定になりやすい乗りモノだからです。

 バイクで安全でスムーズに走るには、手足や体などを上手く使うことはもちろん、目や耳から入ってくる情報により、できるだけ早く障害物などを察知し、まさかの時には、可能な限り早期の危険回避などを行うことも重要。その意味で、音楽を大音量で聴くことは、周囲からの情報を自ら減らしている行為だといえます。

 ちなみに、筆者の場合、クルマを運転するときには音楽を聴きますが、バイクでは「一切聴かない派」です。それよりも、加速する際などにエンジンが奏でるサウンドなどを楽しんでいます。

 また、サスペンションの動きやシフト操作時の作動状況など、バイクから伝わってくるさままざな情報で、愛車のご機嫌(コンディション)もうかがっています。バイクのご機嫌が分かれば、その日の走り方も変わってきますし、なにか異常があればすぐに分かりますからね。

 そして、周囲の状況に加え、それらバイクの情報をできるだけ多く受け取るためには、筆者の場合、五感の全てを使う必要があり、音楽を聴いている余裕はほぼありません。たまに、高速道路のクルーズ中などに気分がいいと、鼻歌を口ずさみながら走ることはありますけどね。

 ともあれ、バイクの走行中に音楽を聴く際は、くれぐれも安全第一で、「適度な音量」を心掛けたいものです。

 *写真はすべてイメージです

 

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https://news.webike.net/bikenews/399988/

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