トヨタ「ルーミー」の売れっぷりがすごい。現行モデルは、2020年9月にマイチェンをした後期型であり、2016年デビューから8年目が経とうとしている。新しいとはいえないモデルであるにもかかわらず、昨年は年間10万台を超える販売台数を記録するなど、まさに爆売れモデル。派手な広告もなく、どちらかというと地味な存在のクルマであるのに、なぜルーミーはこれほど売れているのだろうか。
文:吉川賢一/写真:TOYOTA
200万円でおつりがくる圧倒的コスパが魅力
自販連の統計データによると、トヨタ ルーミーの登録台数は、2020年は約12.2万台、2021年約13.4万台、2022年は10.9万台、2023年は10.0万台と、毎年10万台超も売れている。
●ルーミー販売台数
・2020年:12万2833台(ルーミー8万7242台、タンク3万5591台)
・2021年:13万4801台
・2022年:10万9236台
・2023年:10万800台
・2024年1~7月:2万9259台
両側スライドドアを備えた全長3.7mほどのルーミーは、最小回転半径4.6mという軽並みの小回り性能のほか、車内が驚くほど広くて収納も多く、ウォークスルーが可能であることから、後席に子供を乗せる機会が多い子育て世代にはベストなコンパクトカー。また乗降性のいいフラットフロアは、足腰の弱い年配者にも優しい。
気になる衝突安全性も、全幅を広げたぶん、軽よりもドア厚が増しており、予防安全機能スマートアシストは全車標準装備、全車速追従機能付アダプティブクルーズコントロールも搭載するなど、商品力が高いながらも、販売の中心となっているGグレード(2WD)で税込175万円とかなりリーズナブル。3列シートがあるシエンタはこれよりも100万円以上も価格帯が上がってしまったため、200万円でおつりがくるルーミーのほうが、圧倒的にコスパに優れる。ネット掲示板のユーザーコメントでも、こうした魅力に触れる意見が多くみられた。
ルーミーの中古車をもっと見る ≫売れているのには、比較的短納期であることも
ただもちろん、いいところばかりではない。NAエンジンはパワー不足を感じるし(アクセルペダルを踏み込むと煩い)、横風で大きく横に流されそうになることもあるし、高速直進性も劣る。ヤリスやカローラ、プリウスといったグローバルカーと比べるとルーミーは話題性も低い。なんでこんなに売れているのかと疑問に思っている人は少なくないのではないだろうか。
しかしながら、どこにいってもルーミーをよく見かけるし、筆者の周りにも、いつの間にか軽自動車からルーミーへ乗り換えていた人もいる。理由を聞くと、広さと見た目が気に入ったことと、納期が1~2ヵ月で早かったことが決め手だったという。筆者が「見た目や納期だけでなく、乗り心地やロードノイズなどの質感も知っておいたほうがいいよ(長く乗るならばいずれ気になる所だから)」というと、その人からは「トヨタ車だから気にしていない」と返ってきた。この意見は目から鱗だった。
ルーミーは、コロナ禍真っ只中だった2020~2021年も登録台数は10万台を超えるなど、安定供給ができていた。これは、大阪にあるダイハツ工業池田工場生産だったことも関係すると思われる。筆者などは、走りや乗り心地、燃費、運転支援機能といった走行性能や、細かなデザインの良し悪しについて蘊蓄を述べたくなるものだが、そうではない人にとっては、「信頼できるメーカーがつくっているクルマが、欲しいときにすぐ手に入る」ことが、かなり重要なのかもしれない。コスパに優れることに加えて、短納期であることも、ルーミーの重要な魅力なのだろう。
電動化が避けられないと思われる次期型でも、最大の魅力であるコスパのよさを維持できるか!??
そんなルーミーも、ダイハツ工業による認証不正を受け、開発や認証に関しては、今後はトヨタが責任を持ち、ダイハツはトヨタから受託して開発を行う体制へ変更となるという。ダイハツが小型車開発を行うことは従来通りだが、トヨタによる厳格なチェックが入ることで、クルマづくりが大きく変わる可能性があり、ルーミーも次期型では、一部グレードのバッテリーEV化や、THS-IIによるフルハイブリッド車となる可能性がある。
電動化してしまうと、従来型のような低価格路線は続けられなくなってしまうが、コスパが魅力のルーミーであるだけに、落としどころを決めるのはなかなか難しいところ。はたしてルーミーは今後もルーミーであり続けることができるのか、今後が非常に楽しみだ。
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