9月10日〜13日にかけて東京ビッグサイトで開催された「国際物流総合展2024」で、豊田自動織機トヨタL&Fカンパニーは、トラックへの積み降ろし作業を自動化するフォークリフトの最新モデルをお披露目した。
今年4月には「2024年問題」対策として改正物流2法が成立し(5月に公布)、荷主・物流事業者には物流効率化(荷役時間の短縮等)の努力義務が課され、一定規模の企業には中長期計画の作成などが義務化される。
物流効率化において自動化はもはや不可欠の技術の1つといえる。注目される、フォークリフトの自動運転はどこまで進化しているのか?
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/フルロード編集部・豊田自動織機
トラック荷役機能搭載自動運転フォークリフト
豊田自動織機は、無人搬送フォークリフト(AGF)として、磁気誘導式、レーザーリフレクタ式、レーザーSLAM式の3タイプの「リノバ AGF」シリーズなどを手掛ける企業で、2年前の国際物流総合展2022にて、世界初となるトラック荷役対応自動運転フォークリフトを初公開。
そして今回の国際物流総合展2024では、レーザーSLAM式AGFにトラック荷役機能を搭載した定格荷重1.5t・電動リーチ式フォークリフトと、4本爪仕様の3t・電動リーチ式フォークリフトを参考出品した。
より実用化レベルに近づいた同自動運転フォークリフトは、花王の豊橋工場に2台、4本爪タイプの1台がコカ・コーラボトラーズジャパンの白州工場倉庫にすでに導入されており、花王工場では日本初となる実用化も始まった。またコカ・コーラ工場では2024年12月以降の実用化を見据えた検討が行なわれている。
この車両は、位置検出用の3D-LiDARをルーフ部に備え、障害物検知用のレーザースキャナをフロント2カ所とリア、パレット検知用のカメラ+3D-LiDARを両サイドの2カ所とフォーク間に搭載。
これにより、インフラ設備を必要とせず3D‐LiDARによって自己位置推定と環境地図を作成し、AIによってアプローチ走行経路を自動生成。さらに3D-LiDARを用いたトラック位置検出、マーカーなどの目印が不要なパレット位置・姿勢検出技術によりウイング車への自動荷役に対応している。
会場では4トントラックへの自動荷役も実演し、積み込みのデモ走行では、パレタイズされた荷物をトラックまで運び、サイドシフト(フォークを左右水平にスライドさせるアタッチメント機能)により、隙間なく積載していく様子を披露した。
また積み降ろし作業では、トラックに積載された荷物を、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)で運搬可能な架台に降ろす作業も実演した。
トラック荷役の課題と産総研と行なう取り組み
実用化レベルに近づいたトラック自動荷役機能であるが、まだまだ課題も多く残されている。
たとえば、サイズ・色・材料の異なるパレットの種類、製品ごとに異なる荷姿、広さ・レイアウト・路面状況・照明などの作業環境、トラックの形状・変動する停車位置、緩衝材等の複雑な属人作業など、さまざまな状況がパレット荷役には混在しており、現状ではすべてに対応できるわけではない。
また、自動運転フォークリフトの積み降ろし作業は、有人フォークリフトと比べると2倍近く時間がかかるとされ、効率化には運用方法の見直しも必要だ。(花王では2台同時運用、コカ・コーラでは2枚差しを可能にする4本爪タイプを運用することで時間短縮を図っている)
さらに、現在のトラック自動荷役機能はパレットのみを認識しており荷姿の状況判断はできない。たとえばトラック輸送の過程で積荷がズレることなどは充分考えられるケースだが、その状態で荷降ろしを開始すれば荷崩れを引き起こす可能性もある。(緊急時には停止ボタンを押すか有人走行へ切り替えが可能)
いっぽうで、このような課題に対応するため豊田自動織機は国立研究開発法人の産業技術総合研究所(産総研)と共同で、荷姿異常への対応技術の1つとして「AI荷姿判定」の開発も進めている。
これは、フォーク間のカメラ+3D-LiDARで荷姿を検知し、AIによって判定、作業続行、停止を判断することができる技術。
同技術は、積荷が干渉したりはみ出している状況で、はみ出しが30mm以内であれば回避動作可能とAIが判断し、サイドシフトによる回避動作をして荷降ろしを継続。反対に30mm以上で回避動作が不可能と判断した場合には、作業を停止するというもの。
また、トラックの傾きや路面状況などによりパレットが水平でない場合に対応する「スマートチルト」も荷姿異常への対応技術として開発が進められている。
これはフォーク先端に搭載した障害物センサーでパレット角度を検出し、高さとチルト角度を調整しながら差し込み動作を行なうことで、傾いた状況でも爪が当たることなくパレットを扱える技術となっている。
物流業界では深刻化する人手不足・輸送力不足を受け、「自動化・省人化」が急ピッチで進められている。まだ課題も多いが、自動運転フォークリフトによってトラック荷役が行なわれる、そんな姿が当たり前となる日はそう遠くないのかもしれない。
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