ベストカー本誌で30年も続いている超人気連載「テリー伊藤のお笑い自動車研究所」。過去の記事を不定期で掲載していきます。今回はホンダ 10代目アコード(2020年-)試乗です!(本稿は「ベストカー」2020年10月10日号に掲載した記事の再録版となります)

撮影:西尾タクト

■日本でこのアコードが似合う景色が想像できない

ホンダ アコードEX(465万円・電気式無段変速)。これが10代目となるアコードは2017年より北米では販売されており、今年2月に日本に導入されたモデル。エンジンを発電メインに使うハイブリッド、e:HEVの「EX」ワングレードで、価格は465万円

 フィット、ホンダeと立て続けに新しいホンダの息吹を感じさせるクルマが登場し、「俺たちのホンダが帰ってきた!」と思っていたから、この新型アコードにも大きな期待をしていた。

 でも、聞いてビックリ&ガッカリ、2017年からアメリカで売っているクルマを日本で売るようにしただけらしい。

 今から3年前の新車ということは、ヘタすれば7~8年前に開発したクルマということで、新しい息吹もへったくれもあったものではない。

 1980年代後半から1990年代はじめのアコードは、オシャレに敏感な人たちが競って買うような憧れのクルマだった。

 3代目のエアロデッキや、アメリカからの逆輸入だった4代目のUSワゴンはその象徴で、当時、私はシビックに乗っていたが、あの頃はシビックもアコードも都会的で素晴らしかったことを昨日のことのように覚えている。

 翻って今、目の前にある10代目アコードはどう表現していいのかわからないカタチをしている。

 アーバンなデザインといえなくもないが、コンピュータでカッコよさげなパートを集めてくっつけただけのようにも見える。

 どんな人が買うのか、その想像がとてもしにくいクルマだ。

 走りは問題ない。

 撮影場所まで乗ってきた編集担当は「レクサスにも負けていない」と言うが、私の感想はそれほどでもない。

編集担当は「レクサスのようだ」と喜んでいた走りだが、私には「普通」に思えた。可もなく不可もなくである

 ちょっと重さも感じるし、よくいえば「オトナの乗り味」、悪くいえば「退屈な走り」、最も適切な言い方は「普通に走る」となるのだろう。

 2020年の夏、燃料電池車のMIRAIがもうすぐ2代目に進化しようとしているところに登場するクルマとは思えない。

 オシャレなカフェがたくさんあるなか、「談話室○○」という店をオープンしたようなものだ。

 それも悪いことではないが、古さをあえてネタにしているのではなく、本気で新しい店として開店したとすれば、それはやはりズレている。

 アメリカのアッパーな人たちが住む芝生の庭のある家には似合うのかもしれないが、日本でこのアコードが似合う景色が想像できない。

 ことほどさように、今回はなかなか手強い相手(アコード)なのだが、じっくりと眺めているうちに、この素材が光る方法をひとつ見つけてしまった。

 できるだけワルく仕立てるのである。

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■アコードには「劇的な売り方」が必要だ!

 車高を少し落とし、ボディカラーをパープルのマットカラーに変更。

 エアロとホイールは派手さを抑えながら、下品になるちょっと手前くらいのドレスアップを施す。キーワードは「ワルかっこいい」だが、チョイ悪ではなく「大ワル」を目指すのだ。

 車名は「HELL’s(地獄の)アコード」でどうだろう。

紫のマットカラーにゴールドのストライプ。ホイールにも紫をあしらってワルさを演出!(CGです)

 今回は特別に「HELL’sアコード」のCGを作ってもらった。奇想天外なものではなく、明日にでもできそうなドレスアップで、もともとアコードはこういうワルかっこいいデザインのクルマであったことがよくわかる。

 セダンでは珍しい、その特長を活かすということなのだ。

 セルシオも、ある時期からワルっぽくドレスアップした中古車が急に出回り、そのおかげで中古車価格が落ちない状況にあるのだが、アコードにはセルシオの後を引き継ぐ資質がある。それを活かさない手はないだろう。

 東京オートサロンで秀作を次々に出してくるホンダアクセスに期待したい。すでに気づいていることだろうが、実は、アコードはドレスアップの素材としてとてもいいものを持っているのだ。

 もうひとつ、言っておきたいことがある。アコードは3年前からアメリカで売っているクルマを、日本に導入して新型車として売っている。

 その是非は置いておき、そうするのなら、なぜ「ジャパンスペシャル」を用意しなかったのか。

2017年からアメリカで売られている10代目アコード。日本はハイブリッド専用だが、アメリカ仕様には1.5Lと2Lのガソリンターボもあり、価格も日本円換算で200万円台から。そういう仕様を日本で売る選択肢はなかったのだろうか?

 エルメスでもなんでも、日本に新しい店をオープンする時には日本限定商品を出すのがセオリーだ。クルマだってそういう売り方があってもいいのではないだろうか。

 例えば桜をイメージしたピンクの限定車だっていい。それ自体は売れなくても、展示することで販売店が華やかになる効果が期待できるではないか。

 知っている人はアコードが本当の新型車ではないことをわかっている。

 ならば「劇的な売り方」を模索しなければならないはずなのに、まったくそうした動きがないのはいかがなものか。

「HELL’s(地獄の)アコード」をぜひ検討してもらいたい。

●テリー伊藤 今回のつぶやき

 素のままでは特徴のないセダンだが、「ワルかっこいい」の資質があると見た。ホンダアクセスにイジリ倒してほしい!

(写真、内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)

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