メルセデス・ベンツ・トラックスの「eアクトロス600」が、世界最高のトラックに贈られる「インターナショナル・トラック・オブ・ザ・イヤー2025」(IToY2025)に選出された。昨年のボルボ「FHエレクトリック」に続き2年連続でBEVトラックが同賞を受賞した。
同時選考の「2025トラック・イノベーション・アワード」(2025TIA)はMANの水素燃焼エンジンの大型トラック「hTGX」で、MANは前年の自動運転プロジェクトに続き2年連続の受賞だ。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部
写真/International Truck of the Year・Daimler Truck AG・MAN Truck & Bus SE
IToY2025にベンツ「eアクトロス600」
欧州のトラック雑誌など商用車専門メディアを代表するジャーナリスト・編集者24人で作る「インターナショナル・トラック・オブ・ザ・イヤー」(IToY)の選考委員は、世界最高のトラックに贈るIToY2025にメルセデス・ベンツ・トラックスの「eアクトロス600」を選出した。
ドイツ・ハノーバーで開催されたIAAトランスポーテーションのプレスデイ(2024年9月16日)にて、名誉ある賞がメルセデス・ベンツ・トラックスのカリン・ラドストロムCEOに授与された。
長距離輸送用バッテリーEV(BEV)大型トラックであるeアクトロス600は88票を獲得し、ボルボの新世代トラックとして内燃機関とBEVの両パワートレーンを用意する「FHエアロ」レンジや、イヴェコのBEVトラクタ「S-eウェイ」などに競り勝った。
IToYは過去12か月の間にローンチされたトラックの中で、道路輸送の効率化に最も顕著な貢献をした車両に贈られる。その判定は、技術的な革新性、快適性、安全性、ドライバビリティ、エネルギー効率、環境負荷、総保有コスト(TCO)などの採点基準に基づいて行なわれる。
1977年から続く伝統ある同賞をBEVトラックが受賞するのは今回が2回目で(昨年のボルボ「FHエレクトリック」に続き2年連続)、今年の選考対象となった7モデルのうち5モデルはBEVだった。これはトラックメーカーの間でエネルギー移行に向けた勢いが加速しており、欧州の運送事業者の興味を引き付けていることを示しているという。
IToYのジャーナリストたちは、1.5万km以上を実走行して行なわれたeアクトロス600による「欧州試験ツアー2024」にも参加している。メルセデス・ベンツ・トラックスが企画したこのイベントを通じて、彼らは新型「プロキャビン」の空力性能に感銘を受けた。新型キャブの張り出したフロントセクションとスムーズな曲面サーフィスにより、現行モデルと比較してエアフローは9%改善した。
また、ジャーナリストたちはパワートレーンのパフォーマンスも高く評価した。電動アクスル(eアクスル)方式を採用し、400kW出力の電動モーター2基と、それぞれが207kWh容量のLFPバッテリーパック3基を搭載している。その滑らかな加速は、3つのドライビングプログラムのいずれにおいても静粛で振動のない運転環境を提供した。
さらに、総容量で600kWhを超えるバッテリーにより、セミトレーラを連結した総重量40トンの定積状態にて、途中充電なしで500km以上の航続距離を実現していることを、IToYの選考委員が確認した。
選考を総括してIToYのジャネンリコ・グリッフィーニ会長は次のように述べている。
「メルセデス・ベンツ・トラックスは、eアクトロス600を最初から電気トラックとして設計しました。この決定により最新のBEVトラックでは、長距離輸送を含む様々なミッションが可能になりました」。
2025トラック・イノベーション・アワードはMAN「hTGX」
IToYの選考委員は同時に「トラック・イノベーション・アワード」(TIA)も選考しており、IToYと同時に発表されるが、2025TIAは水素燃焼エンジンを搭載するMANの大型トラック「hTGX」に決定した。IAAトランスポーテーションのプレスデイにてMANトラック&バスのアレクサンダー・フラスカンプCEOが表彰された。
MANは2019年に「aFAS」無人トラックでTIAを初受賞、昨年の「ATLAS/ANITA」自動運転プロジェクトに続き、2年連続・3回目のTIA受賞となった。
IToYによって創設されたTIAは、先進的な輸送ソリューションの中でも革新的な技術に贈られるもので、欧州及び南アフリカの25のトラック専門誌を代表する編集者とジャーナリストが選考している。
MAN hTGXは84票を獲得し、ルノー・トラックスの集配送用プロトタイプトラック「オキシジェン」や、イヴェコの長距離輸送用燃料電池大型トラック「S-eウェイ・フューエル・セル」などを抑え、栄誉に輝いた。
オーストリアのザールフェルデンで行なわれた公道試乗で、IToYのジャーナリストたちが称賛したのは排気量16.8リットルのMAN「H4576」エンジンだった。火花点火式の直列6気筒水素燃焼エンジンである同機は、ディーゼルエンジンと変わらないパフォーマンスとドライバビリティをもたらした。
これとともに高く評価されたのは、同車の「ほぼゼロ」な炭素フットプリントだ。700バール圧力の高圧タンクに貯蔵する56kgの水素は、現状のBEVでは積載量との両立が困難な600kmの航続距離を実現し、排ガスの後処理装置も(ディーゼル車と比較して)シンプルだ。
IToYのジャネンリコ・グリッフィーニ会長は選考委員の決定を次のようにまとめている。
「MANのhTGXは道路輸送の脱炭素において新しい章を開くものです。建設セクターなど環境目標の達成が困難な業界において、従来にはない新しい選択肢を大型トラックに与えました」。
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