日産のフラッグシップミニバン「エルグランド」の次期型のウワサが、ちらほら聴こえてくるようになった。販売面ではラージミニバンの絶対王者、トヨタ「アルファード」に大きく差をつけられているエルグランドだが、次期型が登場するからには、起死回生の一手を持ってくるべきだろう。ではその起死回生の一手とはどんな姿なのか、アルファードに勝つため必要な次期型エルグランドの姿を考えてみよう。

文:立花義人、エムスリープロダクション/写真:NISSAN

■カテゴリの先駆者だったエルグランド だがミニバンとしての魅力により特化したアルファードにその座を奪われてしまった

 現在は、高級ミニバンといえばアルファードだが、高級大型ミニバンというカテゴリを築いたのはエルグランドだ。初代は1997年にデビュー、力強くモダンな外観やパワフルなパワートレイン、上品なインテリアによって、高価格帯であるにもかかわらず販売は好調。オーテックが手がけるキャンプユースに便利な仕様や、スポーティな外観の「ハイウェイスター」、後席にVIPシートを用意した4人乗りの「ロイヤルライン」など、ミニバンならではの拡張性の高さを示してくれた。

1997年登場の初代エルグランド。ミニバンらしからぬ走行性能も話題だった
初代エルグランドに設定された「ロイヤルライン」のインテリア。この時代から4人乗りのVIPモデルが存在したのだ

 ただ、そのエルグランドが2代目に切り替わった2002年5月にライバル「アルファード」が登場。FRベースのエルグランドに対し、FFベースのアルファードは室内高やキャビンスペースで有利となり、デザインも落ち着いた日本人好み。税制面で有利な2.5Lエンジンも用意し、他車とプラットフォームを共有することでコストを抑えたアルファードはファミリーカーとしても導入しやすく、人気は徐々にアルファードへと移行。その後は、アルファードが2代目3代目と切り替わっていくごとに、エルグランドはアルファードに突き放されてしまった。

現行型のエルグランド。全高が低くスタイリッシュでスポーティなのだが、威圧感は半減する
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■アルファードに勝つための絶対条件は「高い全高」

 そんなエルグランドが、アルファードに勝つために次期型で絶対に外してはならないのが、高い全高だ。アルファードは迫力のあるデザインや堂々としたボディサイズによって成功を収めた。日本(や中国)市場ではアルファードのような堂々とした、インパクトのあるスタイリングがやはりウケる。

 次期エルグランドのデザインの方向性だとされているジャパンモビリティショー2023に出展された「ハイパーツアラー」は、アルファードのように目を引く大胆さ、存在感が特徴的だった。近年の日産らしい未来的なこだわりや建築的な佇まいと伝統美を意識したディテールも感じられ、このハイパーツアラーをみて、安心した日産ファンは少なくないのではないだろうか。

 パワートレインは、エクストレイルに採用された1.5LVCターボ+モーターのe-POWERを当初投入し、将来的にはBEVも追加できるようプラットフォームが開発されるだろう。ただ、これだけでは大きく開いてしまったアルファードとの差は埋められない。アルファードに勝つためには、もっと大胆な戦略が必要だと思う。

2023年のJMSで発表された「ハイパーツアラー」。次期エルグランドのデザインの方向性を示していると思われる

■海外展開によって勢いをつけてほしい!!

 筆者がぜひ次期型エルグランドで取り入れてほしいと思っている戦略のひとつが、エルグランドをグローバルで販売することだ。前述したように、日本ではそのデザインによって受け入れられなかったエルグランドだが、パワフルな3.5L V6エンジンのパフォーマンスと、ミニバンなのに走りの素性が高いというエルグランドの魅力は、海外展開をしていれば、もっと評価されていたと思う。

 また、アルファードがここまで勢いを増したのは、海外市場で認知されて、海外からの需要が爆発したことも関係している。ただ注意したいのは海外だけを見てはだめだということ。アルファードは、日本人向けにつくった使い勝手、耐久性、パフォーマンスが海外で評価されている。そのため、グローバライズ化しすぎて全幅1900mm超えにするなどをするのではなく、あくまで日本人向けにつくったうえで海外展開をしてほしい。

 特に注力すべきなのは、アメリカ市場と中国市場のふたつ。北米市場ではINFINITIブランドのフラグシップミニバン「QM(仮)」として販売をするのもよいだろう。レクサスLMの二番煎じだといわれようと、成功事例に習って、認知度を拡げていくのが正解ではないだろうか。

 高級ミニバンカテゴリーはエルグランドによって確立された。ぜひとも、全面刷新でアルファードとガチンコ勝負の魅力的な次期モデルを登場させ、この市場に新たな風を吹かせて欲しい。

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