長~いブームを伸ばした様は、まさにキリンさん! 今回「ケンクラフト」店主であるケンさんが紹介するのは、メルセデス・ベンツのアロクスに搭載されたパルフィンガーのナックルブームクレーンだ。ナックルブームクレーンながら最大49mのブームってスゴ過ぎる!

文/高石賢一、写真/岡村智明
*2024年9月発売トラックマガジン「フルロード」第54号より

クレーンで圧倒的なシェアを誇るパルフィンガー社

メルセデス・ベンツのアロクス5軸車にパルフィンガーPK20002L-SHを搭載したミニチュアモデル。迫力ある雄姿だ

 今回はトラックにクレーンを搭載したモデルを紹介しよう。

 ベースはメルセデス・ベンツ「アロクス」の5軸。搭載しているクレーンは世界で圧倒的なシェアを誇るパルフィンガー社のPK200002L LADEKRAN SH。

 パルフィンガー社は1932年、リチャード・パルフィンガー氏が農業用トレーラ、ティッパーなどの修理工場としてスタート。1959年に最初のクレーンを販売。

 1960年代に本格的に量産を始め、世界各地に輸出も始まった。年を追うごとに革新的なアイデアで独自な商品を企画し、欧州だけでなく世界に販路を広げていった。

 同社の看板商品であり代表商品のナックルブームクレーンだけでなく、林業、スクラップクレーンや災害対応クレーン、鉄道用、橋梁点検機、アームロールのようなフックリフトもラインナップしている。2022年には90周年を迎えグローバル企業としても成長している。

 日本にも営業所があり、販売もされているので現場で見る機会もありそうだ。同社のナックルブームクレーンは短くて折り畳める革新的な構造を持ち、それでいてかなり長いブームにできる。

 いわゆるオールテレインクレーンのような長いブームを持たないのでトラックシャシーにも搭載できるのだ。

ブームを最大に伸ばした姿勢。ブーム長は約850mm。実物は最大約49mとなっている

 機動力の高い製品として林業や海洋などでも用途があり各方面で活躍している。モデルとなったPK200002L‐SHは同社の製品の中でも長いブームを持つモデルで最大約49m。

 この時の最大吊り上げ荷重は約6200kg。メインブーム約19mの場合の最大吊り上げ荷重は40000kg。メインブームは太く短い折り畳み式で2段目のブーム中に7段のブームが収納されている。

 ブーム伸縮シリンダーはブームの外側にあるユニークな構造だ。その先のDPS-PLUS、ジブブームも同様の構造。いわゆるモバイルクレーンとは違う独自のデザインなのだ。

 アウトリガーは4個所、最大張り出し約10m。カウンターウェイトはトラックの前後に装備されている。クレーンの操作はPALCOMPと呼ばれるリモコンで行なわれる。

ドイツの老舗がモデル製造

 さて、モデル製造はドイツの老舗、コンラート社。

 1960年代後半「GESCHA」時代からプロモーション用重機モデルを製造、1970年代初頭に「Conrad」と社名を変更、現在に至る。

 製造は創業当時からおもちゃ発祥の地と言われるニュルンベルク、ドイツ。ライバルであるNZG社も同じ町にあり創業も同じころだが、同社は中国工場へシフトしている。

 ズッシリと重い仕上がりがコンラート製品の魅力のひとつだが、可動部分も実機同様に可動し、本来の目的である立体的カタログとしての要件も充分に満たしている。

カラーリングはドイツのLanz社の仕様で、ドアや後ろのカウンターウエイトにも同社のマスコット、キリンが描かれている

 NZG・WSI・IMC等他のモデルメーカーの商品は精密さを競っているが、ミスター・コンラートのモデル作りのポリシーは精密さを追求するよりも、実機さながらに動かすことができ、まさに立体的カタログにあるとお聞きしたことがある。

 他社がプラスチックパーツを多用するなかダイキャスト素材にこだわり、肉厚でモデル重量が重いというところだ。手にした時ズッシリ重いと嬉しくなるのは筆者だけだろうか。また、ステアリング切れ角も大きいのも同社の特徴だ。

 ユニークなブームやアウトリガーも実車同様に伸縮させることができる。ケーブルウインチのワイヤもセッティングできる。このモデルはスタンダードカラーではなくドイツのLANZという企業のものだ。運転席サイドに描かれたキリンの絵がカワイイ。

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