世界初・国産車初なんていわれたら、いやがうえにも反応してしまうが、ホンダがこれまでに実現してきた世界初・国産車初は安全・安心に加えて、便利なモノばかり。じゃあ、どんなものがあるのか紹介しちゃいましょう。
文/FK、写真/ボルボ、ホンダ、FavCars.com
■1964年にS600が国産車で初めて採用した“3点式シートベルト”
1900年代の初期、イギリスで発生した死亡事故を契機にフランスの技術者が開発を行い、競技車両を中心に取り付けられるようになったといわれているシートベルト。
その後、公道を走る一般車両にも普及していったが、最初にシートベルトを搭載した量産車はアメリカのタッカー・トーピードであった。
とはいえ、当時のシートベルトは腰だけを固定する2点式であり、上半身をしっかりと固定できるような代物では決してなかったが、1959年にボルボが3点式シートベルトを発明すると、それがスタンダートとなって世界に広がっていく。
このような動きに追随するかのように、1964年に発売されたS600では国産車初の3点式シートベルトが採用された。
1964年3月に発売されたS600は、その先代にあたるS500からの正常進化を果たした2シーターオープンスポーツとしてデビュー。
DOHCを採用した606ccのエンジンは57psの最高出力とリッターあたり94psを発生し、最高速度も約145km/hを実現した高いパフォーマンスが自慢であった。
そんなパフォーマンスの高さはもちろん、リーズナブルな車両本体価格も当時のモータースポーツユーザーの心をとらえ、世界各国のサーキットで活躍。世界にホンダの名を知らしめた、歴史的なスポーツカーとして一時代を築いていった。
そのいっぽうで、S600はホンダが4輪車への進出をかけて開発・発売したS500の後継モデルでメカニズムのほとんどすべてはS500から受け継いだものでもあったが、当時のホンダは4輪車開発の経験も少なく、それゆえに他社にはない自由な発想で開発が行える環境にあったことが、日本初の3点式シートベルト採用につながったのだった。
■アルパインとの共同開発で誕生したアコード&ビガーの“カーナビ”
クルマに乗るうえでなくてはならない“あって当たり前の装備”となったカーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)。
そのスタイルやユーザビリティは時流とともに大きな進化を遂げてきているが、世界で初めてカーナビを完成させたのもホンダであった。
高度なエレクトロニクス技術の採用と精密なガスジャイロの開発によって誕生した自動車用慣性航法システム=ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータと名付けられたカーナビが採用されたのは、1981年9月に発売されたアコードとビガー。
当時はGPSがない時代であり、自分の車の位置を割り出すためには方向と距離をいかに正確に算出できるかがポイントとなったが、ホンダ・エレクトロ・ジャイロケータは、方向についてはジャイロスコープで、距離はタイヤの回転数をもとに車速センサーで検出する方法がとられていた。
このジャイロを駆使するとともにCPUとソフトウェアを組み合わせて、6インチのCRTモニターに光の点で自車位置を表示。透明なシートに描かれた地図をモニター画面の前に挿入し、シートと自車位置が重なり合うことで自分の位置を知るという、いまから考えるとじつに原始的な原理であった。
そんなホンダ・エレクトロ・ジャイロケータは、当時としては高価な29万9000円のオプションだったこともあって装着率はきわめて少なかったが……1981年に発売されたアコードはカーナビのほかにも画期的な先進装備を満載。
例えば日本初の性格分けパーソナルシート、日本初のステアリングホイールに操作スイッチを設置したクルーズコントロール機構、日本初のキャブレータ方式エレクトロニックナビゲータ、さらには世界初のトーションバー内蔵の車速応動型バリアブルパワーステアリングなど、まさに初もの尽くしの意欲作であった。
■“ABS”を国産車として初搭載した、単なるデートカーではないプレリュードの功績
プレリュードといえば、1990年代のバブル期にデートカーとして一世風靡したスペシャルティカーだが、そんなプレリュードの2代目にも国産車初の安全装備が採用されていた。
その安全装備とは“アンチロックブレーキシステム”。
ホンダ独自の先進技術をあますことなく導入し、FF車の走りの機能と次代のスペシャルティカーとしての資質を徹底追求して開発した2代目のプレリュードは、1982年11月に登場。
エンジンは高性能を誇るだけでなく、全域でスムーズな吹き上がりを発揮する新開発のCVCC 12バルブエンジンを搭載し、サスペンションも俊敏な操縦性と高速安定性に優れたダブルウイッシュボーン方式をフロントに採用。
機能的で空力特性にも優れたスタイリングをはじめ、軽量・高鋼性のモノコックボディ、高効率ロックアップ機構付のホンダマチック4速フルオートなど、数多くの独創的なメカニズムを採用することで次代のFFスペシャルティカーを名乗るに相応しい1台に仕上げられていた。
そんなプレリュードの大きなトピックとなったのが、最新エレクトロニクス技術を駆使したホンダの独自開発による日本初の4輪アンチロックブレーキであった。
当時はALBと称されていたアンチロックブレーキシステムは、雪道や凍結路などの滑りやすい路面状態での安定したブレーキ性能の確保などを狙って開発したもの。
前輪はハイセレクト方式、後輪はロウセレクト方式とし、各々の左右輪を同時に制御。各車輪に装着されたセンサーからコンピュータが信号を受け、急増・漸増・一定保持・漸減・急減の5段階でブレーキ圧を制御するといったシステムであった。
ちなみにプレリュードは初代が国産車初の電動サンルーフを、3代目が世界初の舵角応動型4WSを採用するなど、単なるデートカーとしてではなく時代を先取りする1台であったこともうかがい知ることができる。
■“キーレスエントリー”を国産車初採用したアコード&ビガーって意外に偉大!?
先述のカーナビと同様に、いまでは“あって当たり前の装備”といっても過言ではないキーレスエントリー。
それどころか、イマドキのスマートキーは携帯するだけでクルマに近づけばドアの施錠・解錠ができるのだから、便利な世の中になったもんだと思っているオールドファンも少なくないだろう。
そんな現代のスマートキーの礎ともいえるキーレスエントリーを国産車として初めて採用したのもホンダで、1985年に発売されたアコードとビガーに導入された。
“21世紀に向けた人間とクルマとの理想的関係がここにある”を開発コンセプトに、1985年6月にデビューしたアコードとビガー。
シリーズ初のトラクタブルヘッドライトの採用もトピックとなったアコードとビガーは、車格感を際立たせながら空力を徹底的に追求したロー&ワイドのエアロダイナミックフォルムが個性を発揮した。
また、アコードにおいてはこれからのデザイントレンドをいち早く具現化するべく、ロングルーフのビュレットフォルムを採用した3ドアのエアロデッキもラインナップ。
加えて、走る・曲がる・止まるをあらゆる領域で実現するべく、FF車として世界初の4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションを採用するなど、話題は満載であった。
そんなアコード&ビガーに採用された国産車初のキーレスエントリーは作動距離が50cm前後の赤外線パルス方式。
作動距離こそ短いもののドアロックの旋鍵・解鍵ができるのはもちろん、数万種類に及ぶキーコードの組み合わせがあったことや盗難防止機能として専用コード以外の信号を10回以上受けると30秒間機能が停止する機能も搭載されていた。
カーナビもキーレスエントリーも国産車初採用がアコード&ビガーだったなんて、この2台は本当にあっぱれ!
■日本の乗員保護技術を大きく前進させたレジェンドの“エアバッグシステム”
1952年に最初の特許がアメリカで取得されたエアバッグ。
その後、日本でも1966年に日本自動車工業会が中心となってエアバッグシステムの研究が進められたが、おいそれと実用化が実現することはなく、むしろ困難をきわめていた。
しかし、1980年12月にメルセデス・ベンツのSクラスがオプション装備で世界初のエアバッグを導入すると、1987年には日本でもエアバッグを装備したモデルが初めて登場した。それが、同年9月にデビューしたレジェンドである。
レジェンドに搭載されたエアバッグはクルマの前方向からの衝突時にステアリング中央部に収納されたエアバッグを窒素ガスによって瞬間的に膨らませてドライバーの顔面への衝撃を緩和する装置で、シートベルトと併用することで効果を発揮するSRSエアバッグシステム。
単に機能させて搭載するだけでなく、“安全システムに誤動作は許されない”という考えを貫いて、16年という歳月をかけて高い信頼性を追求したレジェンドのSRSエアバッグシステムは工学的に設計できないゼロに限りなく近い99.9999%という100万回に1回という故障率を達成。
レジェンドが先鞭をつけたエアバッグシステムはその後、1990年代半ばから急速に普及していった。
また、同車には前輪は左右独立制御、後輪は左右両輪を同時制御して路面状況が左右で異なっていても良好な操舵フィーリングをもたらす3チャンネルデジタル制御ALB(アンチロックブレーキシステム)や高精度デジタルコンピュータ制御のフル電子制御2WAY4速オートマチックなど、ホンダのフラッグシップたる最新鋭のテクノロジーも採用されていた。
記事リンク
前の記事[新型プレリュード]がスタンバイ完了!? 2L直噴ハイブリッドにシビックRSの6MTを融合か?
次の記事N-BOXジョイが9月27日ついに発売!! 188万4700円からでライバル撃破? 正式発表で流れはどうなる?
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。