本記事では、車に搭載されるカメラやセンサーなどいわゆる電子制御装置に関わる不具合修理事例を紹介していく。電子制御装置の不具合はドライバーの意思や技量によらず重大な事故を引き起こしかねない非常に危険なものである。それにも関わらず、必要な整備が行われず見落とされている可能性がある。記事を通じ、このような不具合車両が無くなるよう、整備事業者が安全で適切な修理を行うためには自動車の進化について学ぶことの重要性を呼びかけていくと共に、ユーザーにも正しい眼を持って愛車を任せる整備工場選びの重要性を訴求していきたい。

エーミング項目の見落とし

情報提供:株式会社車検・鈑金デポ

「ディーラーでフロント周り事故による修理(保険を使用)を行った車両が、戻ってきたら前周りセンサー類の反応が事故前と全く違う。修理を行なったディーラーに相談しても保険会社がやらなくて良いと言った箇所のエーミングは行なっていない。それ以外は実施しているので問題ないと取り合ってくれない」とのことでお客様から相談があった。

お客様の説明と見せて頂いた修理明細、そして自動車メーカーの整備要領書から、右ヘッドランプユニットを取替えているにも関わらず、前側方キャリブレーションの履歴がないことに違和感を感じた。何故なら、整備要領書の【新型車解説書→先進安全/運転支援→トヨタセーフティセンス→前側方センサ→構造と作動→前側方レーダセンサ】の項目には「ヘッドランプASSYを交換したときは、フロントサイドレーダセンサのデータ抜き取り・再書き込みまたは再調整が必要」と記載されているからである。

保険会社もディーラーもこの部分を見落としているのでないだろうか? お客様の言葉を読み解くとあるいは、ディーラーが提出した最初の見積りには入っていたが、保険会社が不要と言ったことで削除してしまった可能性も疑われる。いずれにしても、今回のケースにおいては、事故とヘッドランプユニット取替えの因果関係は明らかであることから、前側方キャリブレーションが不要な作業と言える根拠は見当たらないと考える。

電子制御装置に関わる修理や整備は、安全に関わる極めて重要なものである。幸いにも今回はユーザーが違和感を感じたことで大事には至らなかったが、気づかずに重大な事故に繋がっていたらと思うとゾッとする。「ディーラーだから」とか、「ベテランの整備士だから」と過信せずに、きっちりとした根拠に基づいた納得のできる説明を求めることが、自身の身を守るために重要であり、またドライバーとしての責任ではないだろうか。

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