トラックドライバーにしてみたら「なんかチョロチョロしてて危なっかしいんだよな!」というのが本音であろう。
トラックにとって、自転車や原付、バイクなどの二輪車、それに電動キックボードは、できれば敬遠したい相手である。
とはいっても、同じ道路を走るわけだから敬遠したくてもご一緒せざるをえず、ドライバーは少なからずストレスを抱えているのである。
運輸労連がまとめた「自転車およびフード(中食)デリバリーの危険走行に関するドライバーアンケート」結果から、トラックドライバーから寄せられたさまざまな「切実な意見」をご紹介しよう。
文/トラックマガジン「フルロード」編集部、写真/写真AC・フルロード編集部
運輸労連のトラックドライバーアンケート
運輸労連では毎年、全国各地でトラックドライバーを対象にしたアンケート調査を実施している。
今年も7月1日~8月31日までの回答期間を設けて全国各地でアンケートを実施した。
今年からテーマを変えて、トラックドライバーの労働環境の改善に向けて、全国の休憩施設(SA・PA、道の駅、トラックステーション)の機能拡充を検討するための設問とした。例年通りなら、来年の2月頃にそのアンケート調査結果がまとまるはずである。
今回ご紹介するのは、今年2月に発表された前年のアンケート調査で、自転車およびフード(中食)デリバリーの危険走行に関するドライバーアンケート」というもの。回答した8442人のドライバーのうち、94.7%の人が二輪車等の走行に「危険を感じている」と答えている。
このアンケート調査結果については、これまでも「フルロードWeb」でご紹介してきたが、今回はアンケートの自由回答欄のうち、特に電動キックボードや自転車等の危険走行に焦点を当ててご紹介しようと思う。
ちなみに電動キックボードの利用者による交通違反は、1年間で2万5000件超におよぶというニュースが伝えられたばかりだし、最近もトラックと自転車が絡む交通事故が相次いでいる。
その「危ない現場」を知り抜いたトラックドライバーの声はまさに切実だ。
電動キックボードの規制緩和は疑問
まずは、電動キックボードについてである。おシャレで簡便なモビリティとして、都市部で瞬く間に普及した電動キックボードだが、その危なっかしい使用にトラックドライバーは眉をひそめているのだ。以下、トラックドライバーの意見である。
「電動キックボードのマナーは悪質なところが見られるだけでなく、公道走行をすることそのものに疑問があると考えている。トラックと大事故が起こる前に早急な規制が必要である」
「自転車だけでなく、電動キックボードについても日頃から危険運転を行なう人が多いため、取り締まり強化をお願いしたい」
「危険な乗り物だと思うが、公道を安全に走るという意味では、自動車と同様に電動キックボードも免許制とし、常時携行を義務化すべきである」
「電動キックボードの規制緩和は間違っている。気軽に乗れてしまうだけでなく、走行が安定せず少しの段差でも衝撃が大きく事故を起こしやすい。その中で、交通ルールやマナーの知らない人が公道を走るなら危険すぎる」
「電動キックボードやフル電動自転車(モペット)のような特殊な自転車は非常に危険であるため、野放しにしてはならないと思う。法規制が絶対に必要である」
フードデリバリーの危険走行もまだまだ見受けられる
フードデリバリーの配達員は全国で約10万人にのぼるそうだ。それほど急速に普及したため、都市部を中心にまだまだ危険な運転が見られる。
「フードデリバリーの時間制約にもう少しゆとりがあるべきだと思う。また、時間が原因かはわからないが、周りに対して高圧的な運転をする人を見かけることもあるので、危険である」
「フードデリバリーと通勤・通学用の自転車等との差別化が必要である。公道を利用して利益を得るのなら、それ以上の配慮と責任と義務を考えるべき」
「一部の飲食店やファミリーレストラン系列のフードデリバリー時にマナーの悪い人が見られるので、運転時のマナーを徹底する等の改善に向けた取り組みをお願いしたい」
「フードデリバリーは珍しい存在ではなくなっているため、特段危険と感じることは以前より少なくなっていると思う」
「事故発生時、フードデリバリーを行なっている者に保証が無いため、事故の責任を運営会社で持つことが重要である。それができなければフードデリバリーの事業は運営すべきでないと思う」
自転車の交通ルールやマナーにも注意喚起を
トラックにとって、自転車はヒヤリハットの常連だ。「譲るのが当たり前」と思っているルールもマナーも無いに等しい自転車もよく見かける。
「自転車走行レーンができたのはよいが、走行ルールを守ってほしい。また、車道を走行する時にはヘルメットを付けてもらいたい。自分自身を守る上で大切な事だと思う」
「フードデリバリーに限らず、学生等も走行ルール無視が多い。そもそも左側を走行する自転車の方が少ない」
「違法な駐停車が見受けられる。フードデリバリーに限定せず、自転車、原付、自動二輪含めて総じてマナーが悪い地域もあるので、交通ルールを徹底させるための取り組みをお願いしたい」
「何をしても危険と考えているため、それらの危険をどのように回避するかを自動車免許取得の時点から実習すべき。指導官のブレーキだけでは自己判断と自己抑制はできあがらない」
「外国人の方が自転車に乗る際、ルールやマナーが特に悪いと感じる。特に歩道でのペダルなし電動自転車がものすごい速さで走っているので危険である」
「外国人が自転車に乗っているときのルールを教えるべきではないか。特にスポーツタイプの自転車は速度が速いため、自転車ナンバー付けて原付などと同じ部類にするべき」
「逆走など知らずに交通違反している人を多く見かける」
「競技用の自転車で自動車と変わらない速度で走っている人が多く、トラックと並走されるととても危険に感じる」
「トラックも自転車等も互いにルールを守り、お互い安全に走行できるようになる環境が理想である」
「交通ルールやマナーを守らないで、危険で身勝手な運転を多く見かける」
「交差点で自転車通行帯を左折で勢いよく走り抜ける自転車には、危険を感じると同時に腹が立つことがある。自転車からしたら自転車通行帯を走っているだけだが、自動車から見たら左折直前は飛び出しにしか見えない」
「特に学生に見られるが、自転車は法に従う必要がないと思って運転しているのではと思われるほどマナーが悪い」
「ルールを守っている人は守っているし、マナーの悪い人は悪い。フードデリバリー以外も自転車マナーの悪い人が大勢見受けられるので、自転車マナー向上のために何かしらの対策が必要と思う」
指導・取り締まり強化を望む
大事故が起きてからでは遅い! ほとんどのトラックドライバーは、一旦事故を起こせばそれが重大事故に直結することを強く認識している。
それゆえ、自転車等の「弱者」を守る姿勢を貫いているわけだが、トラックにのみ負担を強いるのではなく、もっと「弱者」が危険走行をしないような指導や取り締まりの強化をすべきなりではないだろうか。
「フードデリバリーにかかわらず、自転車の逆走が特段危険であり、トラックの走行中でも恐い思いをしているため、取り締まりを強化してほしい」
「フードデリバリーに限ったことではなく、小さい子供を前後に乗せて朝保育園に行く時に、斜め横断や一時停止無視などをしている人を見かけると、『安全講習教育』のようなものが重要ではないかと考える」
「フードデリバリーのながら運転が非常に危険なため、取り締まりをお願いしたい。また、少なくとも徹底した安全講習を年に1~2回は行なうべき」
「現状ではルールがあって無いようなものである。自転車は免許制ではないため周知がとてもむずかしく、運転する人の年齢もさまざまなため、街頭での声がけが一番有効な策かもしれない」
「一時停止無視・無灯火・スマートフォンを見たり操作しながらの運転が目立つため、取り締まりを含めた対策をお願いしたい」
「自動車運転者の不注意による事故はまだしも、自転車等の不注意による事故が、自動車運転者の責任となるのは納得できないため取り締まるべき」
「学生の自転車通学は、左側を走行するように学校側から指導してほしい」
「行政のみで安全な走行を求めるのは限界があると感じる。各フードデリバリーの運営会社内で実務研修を設けるなど、個人事業主となっているドライバーへ直接働きかける必要があると思う。また、事故や交通クレームがあったら配達員のランクが下がることや、無事故無違反が継続してる人は報酬にプラスする仕組みがあっても良いと思う」
「高齢者の自転車運転が危ない。特に子供を乗せての逆走が怖い。自分が事故を起こしても問題ないと見受けられるところもあり、高齢者への指導強化は必要である」
「自宅周辺でも自転車が走行するのをよく見るが、ハンドルにミラーを付けて走る方がいるため、ミラーを付ける場所等の指導をもっと徹底してほしい」
「自転車や自動二輪車のすり抜け・割り込みが大変危険なため、今以上に注意を徹底してほしい」
「自転車の危険行為はいろいろあるが、特に逆走する自転車の取り締まりは十分にお願いしたい」
「競技用自転車について、特に大きな行事前の練習と思われる走行時におけるマナーや規制を徹底してほしい。例えば、練習時でもゼッケン等を付けて迷惑な自転車を通報できる窓口などを作ってほしい」
「自転車の中(二輪車)でも、特に仕事や常に通勤で使用する人は十分に注意して運転してほしい。子供や老人等が安全に運転できるための講習を行なうのも良いと思う」
「自転車技能講習の必要が必須だと思う」
「小・中学校の義務教育時点で、安全指導や道路交通法の徹底指導をしてほしい。また、道路交通法の曖昧な部分を何とかしてほしい」
「大型トラックを含むクルマの死角について、自転車に乗る人へPRやCMなどを通じて、学校教育での指導があると良いと思う」
「二輪車などの取り締まり強化及び自動車などへ、交通ルールをしっかり認識するための指導をお願いしたい」
「歩行者感覚で自転車を運転している方が多いと感じる。歩道・車道の区別や逆走など法の理解度は低いため、まずは教育や講習など若年層に向けた対策が必要と考える」
* * *
いわゆる混合交通においては、自転車もトラックも、無理で無謀な運転は絶対に避けるべきだし、互いに相手を思いやる交通マナーが必要だが、ルールやマナーを平気で無視する自転車や電動キックボードの危険走行は、社会的に許容できるレベルを越えつつある。
日本の混合交通は狭い道を譲り合って成り立っているようなもの。「弱者」だからといって、勝手気ままな自己中は許されない。そう自己中の危険走行は事故中につながるのだ。
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。