港やコンビナートなどに出入りする車両には、マフラー部分に一見すると大きなサイレンサー(消音機)に細いマフラー出口がそなわっており、騒音対策で装着しているようにも思えるが、そもそも港やコンビナートなどは住宅地から離れていることがほとんどだ。一体なんのための装備なのだろうか?

文:小鮒康一/写真:AdobeStock(トップ画像=NongAsimo@AdobeStock)

■マフラーから発生する火花を防止するアイテム

港湾部やコンビナートで働くクルマのマフラーには「スパークアレスター」という装置が付けられていることがある(antonmatveev@AdobeStock)

 実はあのサイレンサーのようなものは、「スパークアレスター」、もしくは「スパレスター」と呼ばれるもので、“スパーク=火花”を“アレスター=防止する装置”というものなのだ。

 港やコンビナート、揮発性の燃料やガスなどを取り扱う工場などは火気厳禁の場所も少なくなく、そういった場所で万が一マフラーから火花が飛び散った際、最悪の場合未曾有の大惨事となる可能性もゼロでないため、そういったリスクを無くすために装着するものとなっている。

 マフラーから火花が出ることなんてあるの? と思われる方もいるかもしれないが、レーシングカーやラリーカーなどが発する「パンパン」という破裂音はまさにマフラーから発生している。

 レーシングカーほどチューニングがなされていない一般車両であっても、エンジンの不調や触媒の劣化などによって火花が発生する可能性はゼロではないのである。

 ちなみに頻繁にそういった場所に立ち入ることがなく、ごくまれに訪れるというようなユーザーの場合は、本格的なスパークアレスターを装着するのはコスト高になるということで、金属製の金網のようなものをマフラー出口に装着して対策するということもあった。

 ただ近年のクルマ、特にトラックなどに使用されているディーゼルエンジンは複雑な排出ガス浄化装置が備わっている。

 そういった装置内の何重ものフィルターなどを通過するため、万が一火花が発生したとしてもマフラーエンドから火花が車外に放出されることは考えられなくなっている。そのことから、スパークアレスターを装着している車両は減少しつつあるのが現状だ。

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