行くこと自体が目的になってくれる「道の駅」。どこもマイカー向けの施設ではあるものの、公共交通機関のアクセス手段だって最低限あるのでは?……実際どうなのか、全国道の駅の公共交通カバー率を調べてみようと考えた話の第3回目。
文・写真:中山修一
(徳島県にある道の駅の写真付き記事はバスマガジンWebもしくはベストカーWebをご覧ください)
■徳島県の「道の駅」事情はいかに?
2024年8月現在、全国に1,221箇所(駅)もの道の駅が登録されている。1回ではまとめ切れないため、都道府県別に分けてリサーチを進めていくことにして、今回は第2回目の高知県に続き、お隣・徳島県にある道の駅を見てみよう。
徳島県にある道の駅は、現在のところ合わせて18駅。それぞれの名称を以下に記すと……
(1)貞光ゆうゆう館、(2)鷲の里、(3)宍喰温泉、(4)どなり、(5)にしいや
(6)わじき、(7)公方の郷なかがわ、(8)もみじ川温泉、(9)温泉の里神山
(10)藍ランドうだつ、(11)三野、(12)日和佐、(13)第九の里
(14)大歩危、(15)ひなの里かつうら、(16)みまの里、(17)いたの
(18)くるくる なると
……の内訳になる。
■高いか低いか!? 徳島県道の駅の公共交通機関カバー率
上記のデータを踏まえて、それぞれの道の駅の近くに電車(非電化含む)の駅やバス停・その他公共交通機関の乗り場が置かれているかをマップで確認。
道の駅施設から実距離で周辺およそ300mの範囲を「最寄」に見立てて、それより遠い場所はアクセス手段の対象外とした。結果には上記の道の駅に割り振った番号に、最寄の駅もしくはバス停の名称を記してある。
【電車あり】1/18駅 5.6%
(12)JR牟岐線 日和佐
【バスあり】14/18駅 77.8%
(1)ゆうゆう館、(3)道の駅宍喰温泉、(5)ホテル秘境の湯下、(6)東内上、(7)那賀川、(8)紅葉川温泉前、(9)上角、(11)道の駅三野、(12)日和佐、(13)ドイツ館、(14)道の駅大歩危、(15)人形文化交流館前、(17)道の駅いたの、(18)道の駅くるくる なると
【公共交通なし】4/18駅 22.2%
(▲2)(4)(▲10)(16)
※▲付きは、300m以上2.5km以内に電車の駅またはバス停を確認した道の駅。ここでは公共交通なしに含める。
徳島県にある道の駅の公共交通(バスの)カバー率は77.8%、これに加えて鉄道駅も最寄になっている施設が1箇所、という結果が出た。
なお例によって運行ダイヤまでは考慮に入れていないので、バスありの場所でも、実際にバスを使って無理なく行けるかどうかはまた別の話になる。
■1カ所選んで行ってみる
リサーチ対象にした都道府県の道の駅に、1カ所くらいは公共交通機関で訪問してみたい……そう思って徳島県にある道の駅から楽に行けそうな所を1つ選んで、様子を見に行った。
今回選んだのは(3)宍喰温泉。徳島県最南端、高知県との県境にほど近い海陽町にある道の駅だ。登録は1996年4月。海岸線沿いを通って室戸岬へと繋がる、国道55号線のロードサイドに建っているのが特徴だ。
■世界初の乗り物でGO!!
道の駅宍喰温泉へアクセスするバスは3路線+長距離高速バス1路線と、同地はちょっとしたバスターミナル並みの路線数を抱えた停車スポットになっている。
その中に、道路と鉄のレール両方を走れるユニークな乗り物にして、一般旅客用としての実用化は世界初と言われる「DMV」のバス停が含まれている。
しかも宍喰温泉はDMVの終点/始発ポイントなので行きやすさ抜群。世界初の乗り物で道の駅へ行く、という体験もここでしかできない貴重なものだ。
JR牟岐線の阿波海南駅からDMVに乗車すると、同駅から鉄道モードで線路を走ったのち通常のバスに変わり、30分ほどで終点の「道の駅 宍喰温泉」バス停に着く。
道の駅の建物を背にして、バス停から景色を眺めると、鮮やかな青と緑が織り成す海と白い砂浜が、国道を挟んで広がっている。「これは来てよかった」と思わせる爽快な景色だ。
■4つの名を持つ道の駅
宍喰温泉には3+1路線が出入りしているのは前述の通り。全体的な雰囲気はごく普通の停留所であるが、それぞれバス事業者が異なるためバス停標識が複数立っており、バス趣味的に見どころ。
DMVが「道の駅 宍喰温泉」、町営バスが『道の駅「宍喰温泉」』、徳島バス南部は「宍喰温泉前」、高速バスは「宍喰」と、同じ場所ながら4つの名前を使い分けているのも楽しい。
道の駅施設には、おなじみのご当地お土産コーナーや休憩所、トイレ、情報発信スペースがあるほか、バス停名に「温泉」と付く通り、道の駅の隣に温泉ホテルが営業していて、日帰り入浴もできる。
また、道の駅の建物に入ると、大型の鉄道模型レイアウト(たぶんGゲージ 45mm)が展示されていて、その上を走るカメラ付きDMVを運転して遊べる。運転台は2階に置いてあるので、気になる向きは要チェックだ。
■急ぎでも、ゆっくりでも
DMVを使って来られる道の駅「宍喰温泉」。来たまでは良いものの、ちゃんと帰れるのかどうかが気がかり。とはいえ宍喰温泉の場合、そこまで緊張しなくてOK。
宍喰温泉から先は、DMVで来た道を戻る、もしくは徳島バス南部で牟岐方面や高知県方面にも抜けられる。また高速バスも、同停留所は一般路線バス扱いでの乗降に対応している区間に含まれるため利用可能だ。
本数は多くないけれど、1時間に1本くらいは大体どれかのバスが来る、といった感覚で、着いてすぐ帰るのもアリだし、しばらく周辺散策に時間を割くのも、それほど難しくない。公共交通機関を使ってアクセスするには、なかなか手頃な道の駅という印象を持った。
※阿佐海岸鉄道DMVは、車両検査のため2024年10月3日(木)から当面の間、終日運休に入っています。利用の際は公式サイトの運行情報をご確認ください。
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