アメリカで、BMWの複数モデルにおけるシャークフィンアンテナの欠陥に関する集団訴訟が提起された。カリフォルニア州在住のティム・クラフト氏がBMWを相手取り、2017年から2023年モデルのBMW車両におけるシャークフィンアンテナの設計および製造上の欠陥を主張しているというものだ。
文:古賀貴司(自動車王国)/写真:ベストカー編集部
■一時代のBMWの特徴だったシャークフィン
訴訟の対象となる車種はBMW M440i、M550i、X1、X3、X4、X5、X6、X7、330、340i、750iの2017-2023年モデル。
これら車両のルーフに取り付けられた“シャークフィンアンテナ”に欠陥があり、水漏れを引き起こす可能性があるとされている。
クラフト氏は2023年4月29日に、サンディエゴのBMW正規販売店から2019年製のX5 xDrive 40iを認定中古車として購入。
その際、販売員から当該車両は「徹底的に点検されており、問題がない」との説明を受けた。もっとも、これはセールストークの一環で「BMWが定めている認定中古車の基準を満たしている」という程度の意味合いに過ぎないだろう。
そんなクラフト氏の車両、2024年3月(走行距離約30,000マイル時点)で、大雨の後に複数の不具合が発生した。
ダッシュボードに緊急通報システムの故障警告が表示され、カーナビが正確な自車位置を表示できなくなった。さらに運転席上部のハンズフリー電話用マイクが機能しなくなり、BMWコンフォートアクセスシステムにも問題が生じたという。
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■故障の原因はまさかのシャークフィン
2024年5月14日、クラフト氏は車両をカリフォルニア州サウザンドオークスの正規ディーラーの診断、修理のために持ち込んだ。
診断の結果、テレマティクス制御モジュールへ水の侵入が確認され、シャークフィンアンテナの交換を含む修理が推奨された。ただ、この修理は保証対象外とされ約2500ドルの見積もりが提示された。
対するクラフト氏は「シャークフィンアンテナに欠陥があるため、修理費用を支払う必要はない」と抗議したが結局、必要最低限の修理として92ドルを支払ったそうだ。
そもそもディーラーによる2500ドルの修理見積は何だったのやら?
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■水の侵入が電装系の故障を引き起こす?
44ページの訴状に目を通してみると、クラフト氏のシャークフィンアンテナに欠陥がある、という見解は個人ブログやReddit(アメリカの掲示板サイト)などの投稿を引用している様子。
また、米国道路交通安全局(NHTSA)に寄せられた数件の苦情にも言及している。
そして訴状では「水の侵入問題」はクラフト氏の車両に限らず広範囲に及ぶと主張。また、BMWが長年この欠陥を認識しながら、適切な対応や消費者への開示を行わなかったとも主張している。
なお、BMWが2022年10月からアメリカで始めたサービスキャンペーンでは、一部の車種においてルーフ搭載アンテナハウジングのシールが分離し、水の侵入を許す可能性があることが言及されている。
しかし、訴状によれば、この対応は問題の根本的な解決には至っていないとされている。
シャークフィンアンテナの設計、または製造上の欠陥により水が車内に侵入し、内部の電気部品の腐食、車体空洞部への水の蓄積、内装への水害を発生させる、とクラフト氏側は主張。
緊急通報システム、カーナビ、その他の通信システムが誤作動または故障する可能性があり安全上のリスクをもたらし、車両の本来の価値を低下させるとも指摘されている。
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■今後の展開では所有者全員への損害賠償も…
訴訟では、BMWは「カリフォルニア州消費者法的救済法」、「不正競争法」、「虚偽広告法」、「ソング・ビバリー消費者保証法」、「マグナソン・モス保証法」に違反していると主張している。加えて「明示的および黙示的保証の違反」、「詐欺」、「不当利得」なども申し立てられている。
訴訟の目的としてはクラスアクションとしての認定(クラフト氏だけでなく対象車両所有者全員の救済)、被害者への損害賠償、BMWによる車両の修理・リコール・交換、該当する保証期間の延長、広告およびマーケティング慣行の是正などが挙げられている。
クラスアクションとして認定され、懲罰的損賠賠償請求まで発展する可能性を秘めており、今後の展開とBMWの対応が注目される。
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