小さな頃から「歩行者優先!」と教わってきたからか、いつの間にか「歩行者が一番エライ!」になっている人がいる。また、「自転車に道路交通法は関係ない」と思っているかのような人も見かけるのだが……。

文/山口卓也、写真/写真AC

■クルマも歩行者も自転車も守らなければならないこと

地方の農道などによくある、歩道と車道の区別がない道路。その場合、歩行者は右端を歩くことが道交法で決められている

●信号機の信号などに従う義務

 「クルマが来ないから」と赤信号でも横断歩道を渡る歩行者を見かける。通勤時など多くの歩行者が急いでいる状況では集団で赤信号無視……なんてシーンも見かけたことがある。

 道路交通法 第7条には「道路を通行する歩行者などまたは車両などは、信号機の表示する信号または警察官などの手信号などに従わなければならない」とある。文中に「車両など」と書いてあるので、もちろん自転車も同じだ。これに違反すると2万円以下の罰金または科料を科されることになる。

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■歩行者はオールフリーじゃない

●歩行者は車道ではなく歩道を歩く

 歩道があるのになぜか車道を歩く人も見かける。先日、歩道があるにもかかわらず車道左をこちら側に向かって堂々と走ってくるランナーを見かけた。一瞬、「歩道じゃなくて車道は×、こちら側に向かってくるのは……◯? ×?」となってしまった。

 歩道には歩行者がおり、それよりもスピードの速いランナーは歩行者を避けながら走ることになる。歩道に不規則な段差や起伏がある場合は走りにくいこともあって路面の平坦な車道を走っているのかもしれないが……。

 道路交通法 第2章には「歩行者は歩道がない道路ではできるだけ右側に寄って歩くこと、歩道がある場合には歩行者は歩道を歩くこと、歩道に自転車通行指定部分がある場合はできるだけそこを避けて歩道を歩くこと」と、3つのルールの記載がある。

 歩行者が上記に違反して歩道があるにも関わらず車道を通行し車両との事故に遭った場合は、歩行者側にも過失ありとなるのでこれは知っておきたい。

●歩道と車道の区別のない道路は右側を歩く

 「歩行者は道路のどちら側を歩いてもいい」と思っている人は非常に多いと思うが、道路交通法 第10条では「歩行者は、歩道などと車道の区別のない道路では、道路右側端に寄って通行しなければならない」とされている。

 この“歩道など”とは、歩道と十分な幅員(おおむね1m以上の幅)のある路側帯を指している。

 つまり、“歩道などと車道の区別のない道路”の右端を歩くのは道路交通法で決められていることで、左端を歩くのは違法。

 小学生の頃、「道路の右端を歩きましょう」と習ったが、大人になってこれが“法律で決められていること”であることを知っている人はほとんどいないと思う。ただし、道路の右端を通行することが危険である時は、左端を歩くことができることは知っておきたい。また、歩道上を歩行者が歩く場合は歩道の右、左のどちら側を歩いても問題ない。

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■自転車は歩行者じゃない!! ”車両”です

 自転車は軽車両だが、降りて押すと歩行者の扱いになることが少々理解しづらい。

 昨今はスポーツバイクブームもあって、「信号を守る」「車道左側を走る」などの基本的なルールはスポーツバイクに関しては、以前よりはずいぶんと遵守されていると感じる。

 しかし、もともと歩行者感覚の自転車乗り(ママチャリ乗り)の多くが違反しているルールがある。

●自転車は原則は車道を走る。歩道は例外

 では、多くの自転車乗りが犯している交通ルール違反について解説していこう。

 基本、自転車は歩道を走ってはいけない。ただし、いくつかの例外がある。自転車が歩道を走れる例外とは以下のとおり。

・道路標識や道路標示で指定された場合
・運転者が13歳未満の子ども、70歳以上の高齢者、身体の不自由な人の場合
・道路工事、連続工事などで車道左側が通行困難な場合
・著しく自動車などの交通量が多く、車道の幅が狭いなどのため接触事故の危険がある場合

 これらの例外以外、自転車は車道を走らなければならない。

 この時、歩道は歩行者優先であり、自転車に乗って通行する場合は「歩道の車道寄りを徐行(すぐに止まれる速度で走行)」することが決められている。

 なかには歩行者を邪魔扱いしてベルを鳴らしながら走る自転車を見かけるが、これは明らかな違反。

 ちなみに、道路標識“警笛鳴らせ”で指定された場所、危険防止のためやむを得ない場合を除いて使用が禁止されているベルだが、ベル未装着も東京都や埼玉県では条例違反となる。各自治体の条例違反に該当すると、罰則を課される場合もあるので要注意!

 また、13歳未満の子どもは自転車で歩道を走ることができるが、歩行者をぬうようにスピードを出して走る子どもには、これが「違反行為である」ことをきちんと大人が教えるべきだろう。

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■「歩行者の乱横断は危険!」と言われているが…

停車中のバスを追い越す時などは飛び出し注意! だが、本当は、歩行者は車両などの直前直後で車道を横断してはならないというルールがあるのだ

 ニュースで「危険な歩行者の乱横断!」というフレーズを聞くことがある。“乱横断”とは、一般的には「近くに横断歩道があるのに、それを利用しない危険な横断」という意味で使われているが、実は明確な定義はない。

 ニュースなどを見ていると、 “危険な歩行者”“ルールを守らない歩行者”“クルマにとって迷惑な歩行者”というイメージを持ってしまうが、ここで道路交通法を確認してみる。

●車道を横断する時は、そこが横断してよい場所かを見極める

 歩行者の横断に関しては、道路交通法 第12条と13条によって以下が決められている。

・付近に横断歩道がある場合には、横断歩道を渡らなければならない
・車両などの直前直後で車道を横断してはならない
・横断禁止などの標識がある場合には車道を横断してはならない
・交差点の横断歩道は、斜めに横断してよい標識などがない場合は斜めに横断してはならない。

 “付近”や“直前直後”に関して明確な距離などが示されていないが、「横断歩道が近くになく、クルマの直前・直後ではなく、横断禁止標識もない車道はどこでも自由に渡っていい」と思うのは普通ではないだろうか?

 横断歩道のない車道を高齢者が「渡りたい」と思った際、「かなり向こうの方に横断歩道があるのは知っているけど……遠すぎる」と思って渡ってしまうのも理解できるし、「直前直後で横断してはならない」となると、「渋滞で完全にクルマが止まっていて安全な状態なのに渡れない……」となってしまう。

 ニュースなどで言われる“乱横断”を行う歩行者が上記に当てはまるのかはさておき、理解に苦しむ道路交通法もなかにはあり、本当に危険な場所のため横断を禁止したいなら標識を立てる、中央分離帯などのある場所では物理的に横断できないように柵などを設置すべきだろう。

  また、“歩行者横断禁止”や“横断歩行者優先”の標識などの設置は、歩行者や車両運転者が遵守しやすいので、ある程度の効果はあると思うのだ。みなさんはどう思いますか?

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