2024年5月に発表された、ハイブリッドシステムを搭載したポルシェ 911カレラGTS。ついにハイブリッド……と、なんとも言えない気分になった人もいると思うが、環境性能とともに動力性能まで向上させた、実にポルシェらしいクルマに仕上がっていた!! スペインでの試乗の模様をお届けする。
※本稿は2024年9月のものです
試乗:グレッグ・ケーブル(キムラ・オフィス)/まとめ:木村好宏(キムラ・オフィス)/写真:ポルシェAG
初出:『ベストカー』2024年10月10日号
■ル・マンで培った技術を導入
ポルシェは911シリーズ(開発呼称992)のフェイスリフトを行った。そのなかでGTSシリーズには「T-ハイブリッド」を新搭載し、電動化の第一歩を踏み出した。
このハイブリッドシステムは、補器類の電動化によってエアコンの駆動ベルトを廃してシンプル&コンパクトに新開発された3.6L水平対向エンジンがベース。
これに加えて一基の電動ターボとPDKトランスミッションとエンジンに挟まれた厚さ5.5cmの電気モーター、そしてフロントに搭載された400Vのバッテリーから成っている。
この電動ターボはル・マンで優勝した919で採用された熱エネルギーを電気エネルギーに代えるMGU-H技術で、過給すると同時に最大で11kWの電力をバッテリーに送りパワーを蓄える。
そして、ここから駆動用モーターへ電力を送り56psと15.3kgmを発生させる結果、ニューGTSは541psのシステム出力と62.2kgmの最大トルクを得ることになる。
しかもこのハイブリッドシステム搭載による重量増加はわずか50kg、その結果、0-100km/h加速はわずか3秒、最高速度は312km/hに達する。
一方、今回のフェイスリフトでは外観のアップデートも行われ、ヘッドライトにウィンカーが組み込まれ、フロントスカート両側にそれぞれ5枚の縦型フラップが並んだ。
これらはアクティブに開閉し、効果的なエンジン冷却と空力特性の向上を果たす。
また内装では、正面の5連メーターを含むすべてのインフォテイメントがデジタル化され、さまざまなディスプレイを呼び出すことが可能になった。
残念なのは伝統のスターターキーが味気ない押しボタンに代わったこと。そしていまだにヘッドアップディスプレイが未採用な点だ。
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■環境性能は低下させずパフォーマンスを向上
試乗したのはスペインの一般道路とサーキット。電動ターボによるラグのないスムーズな走りと電動モーターのブーストパワーによる圧倒的な加速には、新たな911を感じさせられた。
そして、一層インフォメーションとダイレクト感の高まったステアリングと、反応速度の速まったPSM(ポルシェ・スタビリティ・マネージメント)、さらにはターボから移植されたブレーキディスクなどが相まって、「走る・曲がる・止まる」の性能はカタログの数字以上のレベルアップを果たしていた。
こうした総合的な性能の向上は、ニュルブルクリンク北コースでのラップタイムでも明らかだ。T-ハイブリッドのニューGTSは旧GTSよりも8.7秒も速い7分16秒9を記録したのである。
さらにこうした圧倒的なパフォーマンス向上にもかかわらず、燃費は10.5~11/100km、CO2発生量は239~252g/kmで、旧モデル(10.4~11/100km、236~249g/km)とほとんど変わっていない。
ポルシェのエンジニアは動力性能だけでなく環境性能においても、最新の911を最良の911に仕立て上げたのである。
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■GTSシリーズは5グレードを設定
T-ハイブリッドを搭載した新しい911カレラGTSシリーズは5モデルが展開されている。価格は、カレラGTSが2254万円、カレラGTSカブリオレが2503万円、カレラ4GTSが2365万円、タルガ4GTSが2615万円、カレラ4GTSカブリオレが2614万円。そのほか、3Lターボの911カレラ(1694万円〜)も同時に改良された。
●ポルシェ 911カレラGTS 主要諸元
・全長×全幅×全高:4553×1854×1295mm
・ホイールベース:2450mm
・車両重量:1595kg
・エンジン形式:水平対向6気筒ターボ+モーター
・総排気量:3591cc
・最高出力/最大トルク:485ps/58.1kgm
・システム出力/トルク:541ps/62.2kgm
・ミッション:8速PDK
・タイヤサイズ(前・後):245/35ZR20・315/30ZR21
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